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新曲のファインダーに素敵に合うと思うんだ。俺は取り敢えず初恋と共に固定した。 -- (名無しさん) 2011-11-02 23 04 12 これで初めての恋が終わる時は完ぺきだ。ミクが歌いPVはメイコ -- (名無しさん) 2011-11-03 00 25 08 ↑よう俺。イントロで圧倒的なボリュームのお胸が視界に入りWROST出したぜ -- (名無しさん) 2011-11-03 16 59 34 ↑あれ、俺昨日書き込んだっけ・・・? -- (名無しさん) 2011-11-04 12 27 40 ↑4 ファインダーはもうこれしか考えられないな。柱からひょっこり顔だして走り出すめーちゃんが可愛すぎる//// -- (名無しさん) 2011-11-04 16 29 53 今日このモジュでDearやってる人見た・・・超暑そうでした。 -- (名無しさん) 2012-03-27 16 20 55 なんで誰もパズルで使うって人いないんだ鉄板だろ -- (名無しさん) 2012-10-27 20 27 08 これ白雪に使う人俺だけかな? -- (名無しさん) 2013-02-17 18 08 45 ハト安定 -- (名無しさん) 2013-10-17 17 37 15 金の聖夜やらせたら可愛すぎてヤバかった -- (ポップスター) 2013-12-24 15 07 59 MEGANEとか絶対合います。大体冬PVにおすすめ。夏だったらこの人どうすんやろ・・・ -- (秋奈多二梅雨) 2015-05-02 12 21 32
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Lyrical Magical Stylish Mission 05 Rock Days 「イィィヤァァ!!」 「ぶち抜けぇ!!」 ダンテのスティンガーミサイルの如き刺突が兜の割れたブレイドの脳天を一撃の下に刺し貫き、爆砕する。 その硬直を狙った二体目のブレイドは、なのはの放ったディバインバスターの直撃を受け、そのエネルギーに耐え切れなかったか、溶けるように消滅していく。 「GAAAAAAAAAA!!」 二体を犠牲に二人に生まれた僅かな隙、その隙を逃すまいと、残る一体のブレイドが地面をぶち抜いて、地中から空中にいるなのはめがけて疾風の如き勢いで迫る。 だが、そんな決死の特攻も全てダンテとなのはの掌の上で踊らされているのだということに、残念ながらブレイドは最後まで気付くことはなかった。 「ハッ、見え見えだぜ?」 「もうちょっと考えたほうがいいよ?」 背中に目がついているかのような正確無比な銃撃がなのはを狙った爪を腕ごと吹き飛ばし、その衝撃で体勢が崩れたブレイドに、なのはの一撃が炸裂する。 強烈な魔弾は狙いたがわずブレイドの頭を直撃し、勢い余って大地に強く叩き付けた。 「やれやれ、毎日毎日律儀なことだ」 「ホントです。ちょっとぐらい休ませてくれてもいいと思うんですけどね」 「全くだぜ」 最後のブレイドを撃破したなのはは、ダンテの隣に降りてくる。今回も二人は悪魔の群相手に傷一つ負わない完勝を見せていた。 最初の方こそ、慣れない共闘にいらぬ傷を負ったりすることもあったが、今では完璧なコンビネーションを見せるまでに至っている。 ダンテの言うとおり、毎日毎日現れる悪魔に体力や魔力は削られるものの、いざ魔界に行ったときに必須となるコンビネーションをここまで高められたのだから、差し引きで言えば大幅なプラスであろう。 「今日はこれで全部みたいですね」 「そうだな、周囲の瘴気も消えたみたいだし、今日はこれで打ち止めだろ」 ダンテはリベリオンをギターケースに仕舞い、なのはもまたバリアジャケットを解いて、完全にこの場での戦闘が終わったことを再確認する。 ダンテとなのはの邂逅から三日、ブレイドやフェティッシュ、デス・シザースといったダンテ曰くある程度上等な連中が割と頻出するようになっていた。 「ふぅ……」 「お疲れかい?」 疲れた様子のなのはに意味もなくニヤニヤしながら、ダンテは側にあった自動販売機で缶コーヒーを買い、一本をなのはに向って放る。 なのははそれを受け取り、ブラックであることに顔を顰めながらダンテに聞き返した。というか、普通疲れている相手には甘いコーヒーではないのか。 「ダンテさんは疲れないんですか?」 「ヘイ、この程度で疲れてたら魔界になんて行けないぜ」 「うー……努力します」 口を尖らせて言う。ブラックコーヒーの苦さにか、体力面においては圧倒的に劣る自分への苛立ちか。おそらく両方であろうが。 そんななのはに、ダンテは苦笑しながらもガラじゃないアドバイスなんぞをしてみる。 「なのは、お前さんはもう少しペース配分を覚えな。全力で戦い続けてたらあっという間にヘバっちまうぜ」 「ダンテさんにそれを言われるなんて……」 「俺はいいんだよ、俺は」 どこかコントじみたやり取りも大分板についてきたようで、なのははダンテのリアクションに一々腹を立てることもなくなっていた。 最も、ダンテにしてみればそれは少しばかりつまらないことなのだが。 「もういいです」 「Huh? そうかい」 「はぁ……帰りましょう」 「だな」 二人の共闘が始まってから三日、ダンテはその間高町家に居候という形を取り、なのはとともに海鳴に出現する悪魔の掃討に当たっていた。 ダンテ曰く管理局のちょっかいも最初の二回を除いて行われてはいない。なのははクロノやフェイトのことが気がかりだったが、ダンテは気分良さそうだった。 「敵、強くなってますよね」 「そうだな、最初に比べりゃ上等な連中が出てきてる。もうすぐかな」 「そうですか……後どのくらいか、分かりますか?」 「さあなぁ、まだわかんねーな」 「そうですか」 ダンテはいつでも構わなかったが、なのははもう少し時間が欲しかった。 コンビネーションこそかなりのレベルまで上がってきているけれど、なのは自身の戦闘力という面から見れば、大して成長していないことが自分でも痛感できるからだ。 「……私、強くなってますか?」 それでも気になるのはしょうがないと言うべきだろうか。なのはは多少不安げにダンテを見上げ、聞く。 なのはからすれば当然の疑問だが、ダンテにとってはなのはがこんなことを言い出すのはひどく意外だったようだ。 「ヘイどうした? 今さら臆病風にでも吹かれたか?」 「そんなんじゃないですけど……気になるじゃないですか」 「そんなもんかねぇ。吹き飛べとかぶっ散れとかぶち抜けとか言ってるガキからは想像も出来ねーな」 「……そんなこと言ってましたっけ」 記憶がないが、確かにさっきも止めを刺す際にそんなことを言った気もする。ダンテはさも面白おかしく感じているのか、腹を抱えて笑いながらなのはの頭に手を置いた。 「仮に、足手まといだから諦めろって言ったらお前は諦めるか?」 「まさか。魔界に行く日までに並んでみせますよ。一度決めたことを諦めるほど、私人間出来てないんです」 「クックック、本当に面白いぜお前。まあそうだな、その日が来たらプレゼントを一つやろう。それまで頑張りな」 「ダンテさんからのプレゼントですか……楽しみにしてますね」 「ハッハッハ、欲しけりゃもうちっと頑張りな」 「分かってますよ」 頭に置かれたダンテの手を無造作に払いのけつつ、なのはは決心を新たにした。その顔には、隣で歩くダンテが浮かべるような、大胆不敵で且つ凶悪な笑顔が浮かんでいたとか。 「プレゼントかぁ……何くれるんだろう」 夜、自室でぼんやりと考え事。ダンテは今日も飽きずに士郎と酒盛りをしている。 そんな狂乱の宴に参加する気はさらさらないなのははダンテを放置して自室で休んでいた。 「ダンテさんがまともな物くれるとは思えないけどなぁ……」 それでも、楽しみではあった。 ベッドにうつぶせになって色々想像をめぐらしていると、携帯電話が慣れた着信音を響かせる。 「……アースラ? 誰だろ」 着信画面を見てみると、アースラからの電話だった。おそらくクロノがまた何か言って来るのだろう、あるいはフェイトが説得しようとしているのかも知れない、なのはは渋々電話を取る。 疲れているが、無視して何度もかけられ、安眠を妨害されるのは避けたかった。 「もしもし?」 「なのは? 良かった、もう寝てるかと思った」 だが、聞こえてきたのはクロノでもフェイトでもない声だった。その声に覚えのあったなのはは多少驚きつつ、返事をする。 「ユーノ君?」 「そうだよ」 「どうしたの?」 「エ……じゃない、クロノから色々聞かされたよ。また何かやらかそうとしているらしいね?」 苦笑を感じさせるユーノの声。どうやら、ユーノもまたクロノに言われてなのはを説得しようとしているらしい。 「あー……まあね」 「良かったらでいいんだけど、詳しく話してくれないかな」 「うー……ゴメン。ぶっちゃけちゃうと、今回のことはユーノ君には関係ないし、巻き込んじゃうから」 どうしたもんかと少しの間逡巡したが、やはり話さないほうがいい。なのははそう決断する。 「やっぱりそうだよね」 「ゴメンね」 「ううん、大丈夫。なのはがそう言うときは何言っても無駄だって分かってるし」 「あははは……」 ユーノもまた、まともに説得する気はなかったらしい。あっさりと折れてくれたことに余計な体力を使わなくて済むとなのはは安堵する。 「それでも、手伝えることってないかな?」 「うーんと……手伝ってくれるなら助かるけど、やっぱりいいよ。ユーノ君はユーノ君の好きに動いて。私たちがやってることは管理局から見ればいけないことだし、それに巻き込みたくないから」 「そうか……」 ユーノの助力は確かにありがたい、けれど、何の関係もないユーノが犯罪者になる可能性があることをさせたくはなかった。 予想はしていたのだろうが、それでも残念そうな声色になのはは慌てて何かないかと考える。そして閃いた。 「……あ、じゃあさ」 「ん?」 「治癒魔法、教えて」 「……唐突だね」 「今閃いたからね。この先必要になりそうだけど、クロノ君には聞けないし」 「それもそうか」 なのはは治癒魔法を使えない。知ってる中で使えるのはクロノとユーノぐらいであるが、当然ながらクロノには聞けない。 だが、魔界に行くことになったなら当然ながら傷を負うことが考えられるし、その傷を放置したまま連戦するほどの体力はなのはにはない。 「……分かった。いつがいい?」 「明日にでも。朝早く魔法の練習してるから、その時がいいな」 なのはは早朝訓練の時間と場所を告げて、二人の通話は切れた。 なのはは朝学校に向かい、ダンテはひとしきり家で士郎や恭也と本人曰く遊んだ後、街をフラフラ散歩する。悪魔が昼間に出ればなのはは学校を抜け出してダンテと共に戦い、出なければ授業中は寝て過ごす。 その後、ダンテがなぜか学校に迎えに来て一緒に帰り、悪魔が出るまでもしくは夕飯までみっちり組み手。それ以降、悪魔が出るまでは家でなのはは休みつつ、ダンテは酒盛りをしつつ待機という生活が続いていた。 ちなみに、深夜に出た場合はダンテ一人で戦うことになっていた。 最初こそ深夜は出なかったものの、ここ最近は毎日のように出ており、人界と魔界を隔てる境界が薄くなってきたことを如実に表していた。 「さて……今日はどこに行くかな」 そんなわけで、なのはが学校に行くのを見送った後、士郎と恭也をボコボコにし、気分のよくなったダンテはあらかた把握したこの街の地図を頭に思い浮かべながら呟く。 そろそろ、門を開いても大丈夫そうな場所を検討しないといけないのだが。 「うーん……どこもダメそうだな、おい」 やはり、街中に開いたらどこで開いても被害が大きくなりそうである。とすれば海上しかないのだが。 「気が乗らねーなぁ、帰ってきたときに海に落ちるのは勘弁だぜ」 どこか無人島でも付近にあればそこが一番いいのだが、臨海公園から海を眺めてみてもそれらしきものは見えなかったし、なのはや士郎に聞いてもそんなものは近くにないと言われている。 「……しょーがね、海上にすっか」 ダンテは渋々決定し、臨海公園へとやって来た。確か、モーターボートの貸し出しを行っていたはずだ。 ギターケースの奥底に虎の子の札束が入っていることを確認し、ダンテは貸しモーターボート屋へと歩き出す。 「おいオヤジ、船一艘売ってくれ」 「は? 何言ってんだ兄さん」 「俺は物分りの悪いやつが嫌いでね。なに、誰もタダでとは言ってねーよ、コイツでどうだ」 どがっ! とテーブルに叩き付けた札束の山。少なく見積もっても、モーターボート三艘は優に買える金額だろうか。 オヤジは今までに見たことも無い金の山に目が飛び出るほど驚いているようだ。 「……一艘でいいのかい?」 「ああ。ただし、いつ俺が来ても最高の状態で出れるようにしとけ」 「お安い御用だ。毎度アリ」 ダンテのよく知る情報屋に近い臭いを感じ、顔を顰めながらも、このタイプの人間は仕事はきっちりこなすだろうと思い、ダンテはこれ以上用はないと踵を返す。 さっさと翠屋に行って口直しのパフェを食べなくては。 「じゃあな。そのうちまた来る」 「ああ、兄さん。船の名前はどうするよ」 背中にかけられた声に舌打ちするが、車やバイクと違って船は名前をつけるもんだということを思い出す。 せっかく買ったんだし、派手にぶちかますことになるだろうから、景気付けに最高にクールな名前をつけてやるのも悪くない。 「あー……そうだな、Devil May Cryにしといてくれ。出来る限り派手に、ロックな感じでな」 サラサラと紙に綴る。悪魔も泣き出す船、ダンテとなのはが魔界に行く際に使うにはふさわしい名前だろう。 「デビル・メイ・クライ、ね。確かに承ったぜ。ところで兄さん、コイツはどー言う意味なんだ?」 「……悪魔も泣き出す、そんな意味だ」 「へぇ……ハハハ、確かに兄さんに睨まれたら悪魔も泣き出すかもな」 「こんないい男捕まえて失礼だなオイ」 門を開くための足は確保。手は既にダンテの手中にある。後は機をみて飛び込むだけだ。 ダンテは今度こそスッカラカンになった財布を情けない顔で見つめ、翠屋にツケで食わせてもらうことにした。 カッ、カッ、カッ……定期的に黒板から聞こえてくる堅い音と、教師の説明の声のハーモニーががなのはの眠気を誘う。 今日もまたダンテにひどくしごかれることだろう、そう考えたなのはは眠気に逆らわずに堕ちていく。 そして――― 「…………」 「せんせー?」 チョークを握る手がプルプルと震えている。最近急激に素行が悪化したなのはだが、優しさに定評のある担任は何か事情があるのだろうと随分見逃してきたつもりだった。 「すー……すー……」 だが、やはり目に余る。小学生からこんな調子で行っては、中学高校とどうなるか分かったものではない。ここは、やはりビシッと決めるべきだ。 最初のほうはうつらうつらしながら必死に耐える様子を見せていたなのはだが、ここのところは遠慮も何もあったものではなくなっていた。 授業の開始の起立、礼、着席のときは回りに起こされ渋々起き上がり、着席の瞬間眠りについている。終わりの時は起きないことが多々。 そのくせ、突然授業中に立ち上がって 「先生、トイレに行ってきます!」 という完全に事後承諾の発言を残し教室から逃走、そのまま数十分帰って来ないことも数度。いくらなのはたちの担任がおおらかだと言っても、物には限度というものがあるのだ。 「……いいですか、皆さん。皆さんもこれから先、中学高校となると授業で寝てしまうことはあるでしょう。先生もありました」 プルプル震える手でチョークを握り締めながら、担任は児童たちに向き直る。その顔を見た数名が小さな悲鳴を上げたことなど、これからすることに比べれば瑣末なことだ。 手のひらの中でバキャッ! と音を立ててチョークが二つに割れる。それを見た児童たちが後ずさりしたのも、これからすることに比べればどうでもいいことだ。 「ですが……やはり授業中に寝るのはいけないことです。どうせやるならもっと隠れる努力なりをしないといけないのです」 完全にブチキレた声色をしている。光が眼鏡に当たって目が外から窺えないのも、それを助長している要因であるのは間違いない。 「せ、せんせー?」 「覚えておきなさい……度を超すと、こうなるんですっ!!」 教師の右手が閃く。短くなったチョークは本来の目的を忘れ一筋の閃光と化し、無防備に晒されたなのはの頭部へと吸い込まれるように突き進む。 だが、それより早く、慣れた感覚にカッと目を見開いたなのはがいた。 パキィン チョークの砕け散る軽い音がする。 「Sweet……Baby!!(最高だぜ、ベイビー!!)」 咄嗟に振り抜いたのはもちろんレイジングハート―――ではなく、ただのものさし。 ダンテのリベリオンよろしく振り抜いた後肩に担ぎ、椅子と机、そして机に広げてあった二時間前の教科書の上に足を乗せて、なのはは最高の笑顔で言い放った。 もちろん、左手は手招きを忘れていない。 「…………」 「…………」 時が止まった。当然だが。周りの児童たちはポカーンと口を開け、唯一なのはの隣に座っていた男子だけがなのはの打ち抜いたチョークの破片を浴びて顔を抑え蹲っている。 「……高町、さん?」 「あ、あは、あはは、あはははは……」 何が起こったのかを理解し、なのはは笑うしかなかった。 「廊下に……立ってなさあああああああああああい!!!!!」 「ごめんなさーーーーーいっ!!!!」 廊下におっぽりだされるという初めての経験をして溜息をつく。そして、聞こえてきた声に更に溜息をついた。 「Cool. Bravo. Absolute」 「……レイジングハート、それ、褒めてるの?」 「Of course」 「…………」 ダンテとの訓練は着実に成果を上げているようである。 「Let s Rock!」 シン・サイズを三体纏めてぶち抜いた魔弾が、軌道を変えて地中から飛び出してきたブレイドを叩き伏せる。 「イィィィヤアアァ!!」 その隙を逃さずにダンテの兜割がブレイドを両断。悲鳴を上げて土くれに還るブレイドにはもはや一瞥もくれず、ダンテは次なる相手へと走っていく。 「ハアッ!!」 「Bingo!」 斬り上げで上空に吹き飛ばしたところになのはの魔弾が炸裂し、哀れなヘル・スロースが元の砂となって大地に降り注ぐ。 真下にいたダンテは、砂の嵐を受ける前にもう一体のヘル・スロースの元へ移動しており、剣が分裂したかのような連続刺突で反撃の暇を全く与えずに撃破。 そのまま剣を突き刺し、剣を軸にコマのように回転して周囲の敵を薙ぎ払う。一通り吹き飛ばした後、遠目から炎を吐こうとしていたフェティッシュに向けて突撃。それを邪魔しようとするヘル・プライドと斬り結ぶ。 「Rock it!!」 ダンテがヘル・プライドやフェティッシュを相手にしている背後から襲いかかろうとしていたアビスをなのはが放ったディバインバスターが焼き尽くし、放り投げられた鎌が哀れな悪魔に直撃する。 「ハッハァ!!」 「Blast!!」 止めとばかりにダンテが炎を纏う拳を大地に叩きつけ現界した灼熱地獄に、上空から無数の白光が槍と化して突き刺さる。 白い槍に縫い付けられ、地獄の炎で焼かれた悪魔たちは灰すら残さずに消滅していった。 「Too easy!」 「……ヘイヘイなのはよぉ、さっきから俺の台詞取るんじゃねーよ」 「え、あ、あのー……」 なのはは上機嫌に決めポーズまでとったりしていたが、消えゆく炎の中から出てきたダンテはいまいち消化不良といった感じであった。 それもそのはず、先ほどまでから言おうとしていた台詞を全てなのはが取っていたのだから、スタイリッシュを標榜するダンテにとっては余り面白い事態ではない。 「そーいうの、嫌いなんじゃなかったのか?」 「……つい勢いで」 「まあ……いいんだけどよ」 なのははまたやってしまったと自己嫌悪に陥る。最近、ダンテの影響のせいか、学校でも時々口走ってしまうのだ。 「……ダンテさんのせいですからね」 「ハッハッハ、いい傾向じゃねーかよ」 「絶対そんなことないですっ! 友達にも引かれるし、やめろって言われるし、私だってやめたいですよ!」 思わず口走った台詞を聞いた友人の反応は例外なくドン引き。なのははそのたびに悔い改めようと誓うのだが、どうしてもテンションが上がると言ってしまうようだ。 「ユーモアを理解しない友人たちだな」 「普通の友達と言ってください」 なのはは半眼になって呻く。なのはみたいなごくごく普通の小学生がいきなり「Com n winp!(来な、ノロマ野郎!)」なんて口走ろうものなら、意味のわかる人も分からない人も例外なく引くに決まっている。 ちなみに、言ったのはドッジボールの時間。ボールを持った男子相手に言ってのけた。 さらに間の悪いことに、なのはには英語を理解できる友人がいる。アリサは始めてなのはが言ったのを聞いたとき、目をつり上げて割と本気で説教した。 あのときのアリサは結構本気で怖かった、なのはは後にすずかに語っている。 「今日は終わりですか?」 「多分な」 「じゃあ、帰りましょう」 「そうするか」 ダンテは武器を仕舞い、なのははバリアジャケットを解く。一連の動作は、戦闘が終結したことを知らせる二人の間の取り決めみたいになっていた。 「なのはさぁ、最近また何かやってるでしょ」 「え……えーっと、その……」 「で、また言えないと」 「う……ゴメン」 喫茶翠屋、店外に設置されたテーブルに、なのは、アリサ、すずかの三人が座っている。そこで、最近授業中や日常生活での様子がおかしいなのはにアリサが詰め寄っている場面である。 「まあまあアリサちゃん」 「わかってるけどさ」 「ゴメンね」 以前、PT事件のときも似たようなやり取りがあったのだが、今回は輪をかけて二人は心配をしている。何せ、なのはの言動が急激に悪化しているのだから。 もっとも、その元凶は事件というよりは近く関わっている人間の影響なのだが、そんなのを二人が知る由もなく。 「ヘイ、お嬢さん方。相席させてもらっていいかい?」 平和なテーブルに突如現れた赤いコートを纏った大男。なのはは愕然とし、アリサとすずかは状況についていけず呆然としている。 なのはに悪影響を与えまくった元凶、ダンテがパフェを片手に佇んでいた。 (ちょっと! 何しに来たんですか!?) (周りを見てみな。混んでるんだよ) なのはは思わず念話で聞いてしまう。随分キツイ口調だったが、ダンテの言に渋々周囲を見回すと、中も外もダンテの言うとおり満席だった。 ならば、知った顔のいるテーブルにお邪魔するというのも仕方のないことかもしれない。なのはは嫌々ながらダンテを席に通す。 「あ……この前なのはを迎えに来てた人だ」 「そういえばそうだね」 なのはにとって不幸だったのは、ダンテ自身は覚えていなくても、アリサとすずかはダンテのことを覚えていたことだった。 それもそのはず、三人で帰ろうとしたら校門のところにいたこの男がなのはを迎えに来たと言い放ったのだから。 結局なのははダンテと共に帰り、二人はそのことについて随分議論を交わしたりした。激論だった。曰く、彼氏。ありえない、知人。それこそおかしい。等々。 「えーっと……はぁ、この人はダンテさんって言って、お父さんの昔のお友達なの。それで、今はウチに泊ってるんだ」 なのは、もうどうにでもなれ。まあ、この二人がいるなら余り妙なことは言わないだろう。多分。凄く不安だが、こうなってしまったら変に追い出すのもおかしい。 「そうなんだ」 「うん。ホラ、ちょっと見た目が怖いじゃない? だからこの間は言わないほうがいいかなって思って……」 ダンテが迎えに来た翌日、なのはは随分問い詰められたものだ。結局逃げ回って答えなかったツケがここで回ってきた。 「ふーん?」 「な、なに?」 「いやまさか、なのはにこんな大きな彼氏が出来るなんて思ってもいなくてね」 「ちょ! アリサちゃん!?」 「Easy does it. 落ち着けよ。詳しく聞かせてくれ」 「ダンテさん!!!」 ドガン! とテーブルが割れる勢いで手を叩きつける。衝撃でダンテのストロベリーサンデーが一瞬浮いた。 「ヘイヘイ、そう怒るなよ」 「……誰のせいだと」 「それよか、そっちの二人は紹介してくれねーのか?」 「……アリサちゃんとすずかちゃん。私の親友だから、ちょっとでも怪しいそぶり見せたら本気で怒りますからね」 「アリサ・バニングスです」 「月村すずかです」 「ご丁寧にどうも。俺はダンテ、いつまでこの町にいるかはわからねーが、一つヨロシク」 二人の挨拶に、ダンテは芝居がかった会釈で返す。なのはは本気でとっとと失せて欲しいと思ったが、親友二人はそれを許してはくれないようだ。 「それでそれで、なのはとはどういう関係なんですか!?」 「あー……そりゃー」 いつの時代も女の子の興味はこの話題が一番なのだろうか。ダンテは困ったようになのはを見る。なのはは半眼でダンテに対して釘を刺す。 「妙なこと言ったらほんっきで怒りますよ」 「なのはは黙ってて。是非ホントの事を教えてください」 「ホントってなぁ……照れるよな、なのは?」 「キャーやっぱり!」 「ダンテさんっ!!!!!」 なのは激怒。ダンテちょっとビビる。やはり、女の怒りには勝てそうもない。ダンテは本気で、まだプレゼントであるあれを渡していなくて良かったと思った。 この辺一体が吹き飛んでてもおかしくない怒りようだ。 「オーライ、俺が悪かった。だから落ち着けよ」 「なのはー」 「うう……」 二人でいるときならまだここまで怒鳴ったりはしなかっただろう。 周囲の客もなんだなんだと好奇の目を向けてくるし、喉は痛いし、なぜかなのはが悪いみたいになってるし、踏んだり蹴ったリとはこのことである。 「……そういえばダンテさん、さっきなんとおっしゃったんですか?」 「さっき?」 「ほら、英語で」 「ああ、『Easy does it』落ち着けよって意味だ」 「なのはがこの間言ってたね」 「ちょ! アリサちゃん!?」 「そりゃもう、ダンテさんにそっくりな感じで」 「へぇ?」 「し、知らない。知らないんだから!!」 「Easy does it. 落ち着けよ、テーブルが割れるぞ」 「割れないよ!!!!」 どちらかというと、テーブルが割れるより先になのはの血管が切れそうである。ダンテはそれを見て爆笑していた。止めろよ。 あの後、すずかとアリサが用事があるとのことで解散となり、なのはとダンテは並んで高町家へと帰っていた。 「うう……ひどい目にあった」 「いやー楽しかっだっ!?」 散々なのはをからかって楽しんだダンテに仕返し。思いっきり踏んづけてやった。もっとも、驚いて声が上ずっただけで、ダンテ自身はケロッとしているのであるが。 「ヒデェなおい」 「どっちが」 やれやれ、とダンテは頭を掻きながらなのはの隣を歩く。さっきから頭を抱えたり唸り声を上げたりダンテの足を踏んづけたり、中々どうして傍目で見るには面白い行動を繰り返している。 そんなダンテの内心にも気付かないなのはは明日の学校が憂鬱で憂鬱で仕方なかった。あの二人のことだし、余りおおっぴらに吹聴はしないだろうが、それでも心配は心配だ。 あの二人以外にもダンテの姿を目撃している人物は大勢いるのだから。 「明日どうなるんだろう……」 「なんだ、それなら心配いらねーよ」 「……ダンテさん?」 「明日、出るぞ」 こともなげに言う。なのはは一瞬ダンテが何を言っているのか理解できなかったが、いよいよとばかりに気を引き締め――― 「……でも、夜に出るなら学校は行かなきゃダメじゃないですか」 「あ、そっか」 「…………」 「だから、その可哀想な人を見る目はやめろっての」 なんとも締りのない出発予告になってしまったとか。 「痛たたた……」 「やれやれ、大丈夫か?」 道場に寝っ転がったなのはは、体を苛む鈍痛に顔を顰める。今もまた、ダンテに投げ飛ばされたのだ。 「大丈夫です」 「ならばよし。時間も時間だし、そろそろ終わるか」 「そうですね……」 日課の組み手が終わりを告げる。組み手というか、相変わらずダンテが一方的になのはを攻撃し、なのはがそれをひたすら防ぐという内容だったのだが。 慣れてきて、何とか反撃してやろうと試みたが、全く出来なかったことになのはは内心悔しがる。 「どうだ、ちったあ身についたか?」 「そりゃもう。日々の実戦で実感してますよ」 「ソイツは良かった」 それでも、攻撃ではなく防御と回避、それに通じる危機察知能力を鍛えてくれたダンテになのはは感謝していた。 なのは自身も言ったとおり、日々湧き出る悪魔との戦いで感覚は昇華され、短い期間の割には随分と信頼できるレベルにまでなっていたからだ。 それはもう、今日の授業中が証明している。 「初日なんざ、アてられただけでビビッて足が竦んでたのによ。大した成長だぜ」 今日なんかは、反撃まで入れようとしてきたのだ。ここ数日のなのはの成長にダンテは内心驚嘆していた。 これならば、自身がかつて使った武具を預けることも出来るだろう。この間言ったプレゼントだ。 「そんなお前に、約束のプレゼントだ」 ダンテはどこからか取り出した白く発光する篭手と具足をなのはの前に置く。 「……これが、ですか?」 「ああ。コイツはベオウルフっていう魔具でね。頑張ったお前さんにやろう」 「……どうやって使うんですか?」 「腕と足に填めるんだ」 「大きすぎますけど」 「ベオウルフが認めれば、サイズは勝手に修正される。なに、今のお前なら大丈夫だ」 言われるままに、なのははベオウルフを装着しようとして、大きすぎて無理だったためにダンテに付けてもらう。すると、ベオウルフが激しく震え、発光する。 「きゃっ……あ、あれ?」 「ハハハ、合格おめでとう、ってな」 「凄い……」 なのはのサイズにあわせて小さくなったベオウルフが、なのはの手足で光り輝く。ひょんなことから得た新たな力に、なのはは興奮を隠さずにダンテに向かって聞く。 「で、どうやって使うんですか?」 「そのまま殴れ、って言いたいんだがな。お前さんがそれを使って殴っても大して効果は出ないだろう。こればっかりはしょうがない」 どうしても腕力的な意味で、なのははダンテどころか一般人にも大きく劣る。それはもう、子供だししょうがないことだ。 それでも、出鼻を挫かれたなのはは少しガッカリした様子でダンテを問い詰める。 「じゃあなんで」 「ソイツはスンゲー頑丈だからな。咄嗟のときはソイツで防御しな。そのためのもんだと思え」 「……成る程」 しかし、さすがに意味もなく渡したわけではなかった。レイジングハートは確かに頑丈だが、万が一壊れた場合なのはは戦う手段を失うことになる。 ダンテ自身が知る上級悪魔の攻撃の威力から考えて、最悪の事態にならないないためにもダンテは盾としてベオウルフを預けたのだ。 「コイツはオマケだ。外に行くぞ」 「へ?」 ダンテ、なのはを連れ立って庭へ。ニヤニヤ顔のダンテと、理由が分からないなのはが庭の開けた場所へ出る。 「思いっきり地面を殴ってみろ。掛け声は”Go to the hell”だ」 「はぁ……」 「いいか、全力だぞ?」 「分かってます……Go to the hell!!」 掛け声の意味も理解しないまま、全力で拳を地面に叩きつける。すると、インパクトの瞬間ベオウルフが強く輝き、上空を含むなのはの周囲に白光が吹き上がる。 「え、えええ!?」 「ヴォルケイノ、お前が使えそうなベオウルフの技の中でも最強のもんだ。ここぞってときに使いな」 範囲や威力はダンテが使うときに比べて数段下がるが、元々攻撃力に特化したベオウルフの技だ。なのはが使ったとしても、十分通用する破壊力である。 ダンテはそう判断した。 「あ、ありがとうございます」 「なに、いいってことよ」 「ところで、あの掛け声ってどういう意味なんです?」 「地獄へ落ちろ」 「……良かった、学校で言わなくて」 なのははダンテの言った言葉を覚えていた。意味もわからなかったが、これだけは使わなくて良かったと本気で思った。場面にもよるだろうが、確実に人格を疑われる。 「……掛け声言う意味、あるんですか?」 「ああ、ある。言うのと言わないのじゃ威力が違うんだ」 「ホントですかそれ」 「無論、嘘だ」 無言で振るわれたベオウルフの一撃がダンテの腹に炸裂する。 「いてぇな、おい」 「知りません」 魔界突入まで突然ながら残り一日。なのはは、成長した自分に確かな手ごたえを感じていた。 「ところで、これ着けたまま今日明日生活するんですか?」 「もちろんだ。マミィやフレンドに聞かれたらファッションだって言うんだぜ?」 その夜、なのはがダンテをボコボコに殴ったとか殴らなかったとか。 前へ 目次へ 次へ
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Lyrical Magical Stylish Mission 12 Fated Twins 「バージルゥ!!」 「ダンテェェェ!!」 一瞬の停滞の後、二人の刃が死闘の幕開けを告げる鐘の役割を果たした。 「……凄い」 なのはの呟きは金属音に混ざり、風に流れ消えていく。なのはは眼前の常軌を逸した光景に瞬きも忘れて見入っていた。家が剣術をやっていることから、なのはも多少は剣の知識があった。 だからバージルの使う技は居合いということも理解できた。それでもなお、その悪魔の技には感嘆の声しか出てこない。 柄に手を掛けた瞬間には振るわれていて、次の瞬間には鞘に収まりもう一撃放たれる、その繰り返し。本来、一撃必殺で二撃目がない居合いのはずなのに、バージルは一撃必殺の剣を連続して放っているのだ。 しかも、一撃一撃を視認できない高速で。 そして、それを受けるダンテもまた信じられなかった。次々と放たれる不可視の剣をどういうわけか知覚し、リベリオンで弾き、そしてあまつさえ反撃すら行っている。 完全に人間を超えた、もはや幻想的とも言える光景だった。 「イヤァァッ!!」 「フンッ!!」 そして、戦闘を始めてからまだ間もないというのに既に何度目になるか分からない弾き合いの後、計ったかのように離れて距離を取る。 互いが互いの剣を完全に熟知しているがゆえに、両者は余人の全く踏み込めない領域で拮抗していた。 「ったく、相変わらず恐ろしい剣だな」 衝撃に痺れる手を振りながらダンテがぼやく。だが、バージルの本気はこんなものではないし、ダンテもまたそうだった。こんなのはお遊び、予定調和の取れたただの挨拶代わりだ。 「―――Let s begin the main event.(メインイベントを始めようぜ)」 「―――Rest in peace.(楽にしてやる)」 さあ、本番はここからだ。間合いをもう一歩詰めよう。 「おおおっ!!」 「ハアッ!!」 さらに速度を増してぶつかり合う剣。だが、先ほどと違うのは――― 「! 血が……」 剣と剣がぶつかり合う金属音、それによって生じる激しい火花。それ以外に、計ったかのように両者から同時に舞う血飛沫。今まで互いに完璧な防御を見せていたのに、何故突然血が混じったのか。 その理由は簡単、両者とも確実に致命傷となりえるだろう攻撃だけを防ぎ、多少の傷は無視しているからだ。 ダメージを抑えることよりも、自分が貰うダメージ以上のダメージを相手に与える、二人が選んだのは文字通り骨身を削り続ける戦法だった。 どのぐらい血を流しながら斬り合っただろうか、冷静に時計を見ればきっと驚くほど短い時間だが、ダンテにとってはもの凄く長く感じた一瞬である。 互いに無数の傷を負い、傷を与え、それでもなお剣戟は一向に衰えぬ、それどころかより激しさを増している。 「―――Wasting time!!(時間の無駄だ!!)」 悪魔の血を引くダンテとバージルにとって、多少の掠り傷など何の意味も持たない。周囲に満ちる瘴気と魔力によって高められる悪魔としての性質が、そんな掠り傷などほんの数合のうちに治してしまうからだ。 千日手、このままでは永劫勝負がつかなかっただろう打ち合いを動かしたのはバージル。埒があかないと踏み、遂に引き金(トリガー)を引いたのだ。 「ガアアアッ!!」 「どわっ!?」 バージルを中心に爆発的な魔力が渦巻き、打ち合っていたダンテが吹き飛ばされる。 「!! ダンテさん!」 「ちぃぃ!」 吹っ飛んだダンテを追って迸る剣閃。魔人バージルの放つ空間斬りが、空中でロクに身動きの取れないダンテに襲い掛かる。死の一撃がダンテに突き刺さろうとした瞬間、剣戟の場にそぐわぬ銃声が連続で響く。 「危ねぇな、オイ!」 ショットガンを連続でぶっ放し、強引に吹っ飛びの軌道を変えて辛くも避ける。 「……滅茶苦茶だ」 端で見ていたなのはがダンテのあまりに滅茶苦茶な回避に呆れ果てる中、着地し、すぐさま転がって二撃目を避け、さらに大きく跳ねることによって三撃目もギリギリ避けきったダンテがバージルに向かって疾走する。 「やってくれるぜ!!」 遠距離では勝ち目がない。銃撃が全て剣で斬り飛ばされる上、神業じみた空間斬りを防ぐ手段がないのだ。ならばどうする? ―――答えは簡単、近付いてぶっ飛ばす。 「シャアアッ!!」 ダンテが駆け抜ける。それを阻止せんとバージルの居合いが放たれるが、驚異的な加速で飛び込むダンテはそのスピードを維持したまま物理法則を全く無視したかのような体捌きで辛うじて致命傷を免れる。 傷を負っていることに変わりはなかったが、ダンテにとってはそれで十分。 「オラァッ!!」 「フンッ!」 加速をつけたリベリオンが魔人と化したバージルを掠める。居合いを放った直後、刹那の死に体状態に打ち込んだ神速の一撃ですら致命傷にならないことにダンテは内心舌打ちし、首を狙って飛んできた一撃を皮一枚で避ける。 そこから先はついさっきと全く同じ、互いに僅かな傷を負わせつつ、拮抗した戦闘が続く―――少なくとも、横で見ていたなのははそう考えていた。 だが、トリガーを引いたバージルと引いていないダンテ。この差が、徐々にだが確実に天秤をバージルへと傾けていく。 ダンテの攻撃が見る見る少なくなり、ただひたすらバージルの剣を受けるだけになってきていた。そんなダンテの防御を突き抜けた攻撃が、ダンテの体をあっという間に血で染め上げていく。 「まだ、まだぁ!!」 ダンテが咆哮を上げ、劣勢を覆すべく魔剣リベリオンが更に速度を上げる。人外の速度で振るわれる刃。だが、バージルはダンテの剣を全て無傷で弾き返し、ダンテはバージルが攻撃するたびに傷を負っていく。 それでも何とか致命傷を避け続けていたダンテだが、ついに勝利の女神はその身全てを力へと捧げた男の方へ微笑んでしまった。 「ぐあっ……!」 「鈍ったな、ダンテ」 逆転に一縷の望みを賭けた特攻に近い形で振るわれたダンテ決死の一撃をバージルは首の皮一枚犠牲に避け、そしてバージルの一撃がダンテの腹を深く切り裂き、返す刃が肩から脇に抜けるまで振り抜かれる。 血飛沫が舞い、それでも諦めないダンテは止めとばかりに放たれた垂直の唐竹割を辛くも防ぐが、その硬直に蹴りを食らって吹き飛ばされる。 「ぐ……そういうアンタこそ、前より鋭くなってがあああっ!?」 片膝をつき、剣を支えに倒れることだけは免れていたダンテだが、強がりを言おうとしてバージルが放った幻影剣に貫かれ絶叫する。 そして、続けざまに放たれた幻影剣を避けることすら出来ず、ダンテはついにその場に崩れ落ちた。 バージルは魔人状態を解除し、全身から夥しい出血をしながらも意識を失わずバージルを睨みつけるダンテに、閻魔刀の切っ先を突きつけながら問う。 「……何故、トリガーを引かない」 「ぐ……引く必要が、ないからな」 「……愚かだな、ダンテ。本当に、愚かだ」 「へっ……まだ、勝負は、ついちゃいない、ぜっ!」 諦めないダンテが苦し紛れに銃を乱射するが、そんなものが通じるバージルでもない。 全て切り払うと、弾が切れて撃鉄の音だけを虚しく響かせる銃をそれでも引くダンテに向かってゆっくりと歩き出す。 ―――今助けに行かないと、ダンテは死ぬ。 その思いが横で見ていたなのはの頭を占める。だが、そんな思いに反して足は鉛にでもなったかのようにピクリとも動いてくれない。 (助けに行って……助けられるの? 私が、あの人を、止められるの?) かつて、この世で最強の悪魔、魔帝を倒したダンテ。そのダンテを倒すダンテの兄バージルを、ダンテに助けられてばかりだった自分がどうこうできるのか。 浮かぶのは、一瞬の後に二つに分かれる自分の姿。決して身体能力に優れているわけではない自分に、あんな剣が飛び交う嵐の中に飛び込める資格なんかあるわけがない。 でも、それでも。 (……助けられる、助けられない、じゃない。助けるんだ、私が、ダンテさんを!!) 今まで何度も助けられた。その借りを、今返さなくていつ返すのか。 (大丈夫。私だって、強くなった。それに、私たちは絶対に負けられないんだ!) それ以上に、譲れないものがある。帰りを待つ家族のためにも、外で戦う親友のためにも。今、ここで退くわけにはいかない。 目を閉じ、深呼吸。それで、ぐちゃぐちゃだった頭は嘘のように軽くなり、固まってた体は信じられないほど軽くなった。 ―――さあ、行こう。 心を砕こうとする死への恐怖を鋼の意志で押さえつけ、震える体をそれを上回る信念で叱咤し、なのははゆっくりと歩き出した。 「……む」 バージルの足が止まる。それもそのはず、傍観を約束していたはずのなのはが、ダンテを守るように立ち塞がったからだ。その目に、強い決意の光を湛えて。 「何の真似だ、小娘」 「見て分かりませんか?」 「おいなのは、俺は手を出すなって言っ!!」 ダンテの台詞は最後まで続かない。なのはが魔力を込めたレイジングハートで思いっきりダンテの頭をぶん殴って吹き飛ばしたからだ。 「ぐっ……」 「少し、頭冷やそうか」 吹っ飛ばされた衝撃が傷に響いたのか、ダンテは低くうめき声を上げてその場に蹲る。 なのははレイジングハートを肩に担ぎ、いつも組み手で自分を吹っ飛ばした挙句見下ろしてくるダンテと同じポーズで、ぶっ飛ばしたことを悪びれる様子もなくダンテに言う。 「Shut up. こんなのも避けられない怪我人は黙って見てなさい」 「なのは……!」 「兄弟喧嘩だし、平和に終わるなら傍観していようと思いましたけどね。ダンテさんが殺されるっていうなら話は別」 「だから……人の話を」 「聞くのはそっちですよダンテさん。いいですか、ダンテさんがここでやられたらどうなると思います?」 「……それは」 「海鳴は地獄と化す。それだけじゃない、今門の外で戦ってるクロノ君やフェイトちゃんもどうなるか分からない。私は、そんなの認めない」 「…………」 ダンテは言葉に詰まる。内容もさることながら、なのはの眼光に何も言えなくなってしまっていた。なのははダンテから目を外すと、バージルに向き直りながら言葉を続ける。 「それだけじゃない。今ダンテさんが殺されたら、どの道私もバージルさんに殺される。相手にされなかったとしても、結局私一人じゃ外まで帰ることすら出来ない」 「だからって……」 「甘く見ないでください。これでも散々ダンテさんにしごかれたんですから、ダンテさんが傷を治す時間ぐらい稼いで見せます」 「ちっ……もう知らねぇぞ」 「Yeah」 バージルはダンテの判断に驚愕するが、ダンテは大の字になってぶっ倒れてしまった。どうやら、本気でなのはにバージルの相手をさせるつもりのようだ。 「というわけです。水を差して悪いとは思いますが、貴方の相手は私です」 「……俺も舐められたものだ。今退くならまだ見逃してやるが?」 「You scared?(ビビッてんのか?) 小娘相手に恫喝なんて」 視線だけで気の弱い人なら殺せそうな、そんなバージルの眼光を受けて、それでもなのはは怯まず、不敵に笑い飛ばしてバージルにレイジングハートを突きつけた。 「……いいだろう。俺に楯突いたことを後悔して、死ね」 バージルが刃を鞘に収め、居合いの構えを見せる。バージルの居合いの速度は既に人の認識を超えた速度。まともに食らえば、食らったことすら分からず絶命するだろう。 なのはは突きつけていたレイジングハートを下ろし、静かに魔力を込め、魔法の用意をする。 「…………」 「…………」 なのははただボケッと二人の戦いを見ていたわけではない。自分との組み手で見せたダンテの動き、そのレベル差から推測する兄バージルの強さ。 そして、全力のダンテと打ち合うその技量。余りのレベルに震えそうになりながらも、”もし私が戦うことになったら?”というイメージをひたすら頭の中で行っていた。 今までの結果ではただの一度もバージルに傷を負わせることすら出来なかったが、イメージ上で散々殺されることにより、たった一つではあるが勝ちへの道を見出していた。 最早言葉は要らない。一瞬の後放たれる刃は避ける暇もなくなのはを切り捨てる。バージルもなのはもそれは分かっていた。その運命になのははどう抗うのか。 「……Die」 「……!!」 バージルの呟きが風に流れる。その声を聞いた瞬間、既にバージルはなのはの後ろで刃を鞘に収めて―――二つに分かれ、血飛沫を撒き散らしながら倒れようとするなのはが溶けるようにして消えていく。 「After image, successful」 「!? 幻覚か!!」 バージルが気付いた時にはもう遅い。すでに上空でなのはが発射の体勢を取っている。 「ディバインバスター!!」 「ちぃ!」 やはりバージルは、なのはを小娘だと侮っていた。その驕りが生んだ僅かな時間、その一瞬を狙っていたなのはの魔法を避けることは常人には不可能だ。 なのはの放つ極大の一撃がバージルを襲う。並みの悪魔ならそのエネルギーに耐え切れず、一瞬にして溶解するレベル。 だが、最強の悪魔狩人であるダンテと拮抗するその兄バージルは、一瞬の後の死の運命に抗う術を持っている。 「はあっ!」 トリックアップ。一瞬で上空に移動する技巧であり、バージルの神速の剣技を不動のものにしている体術である。ディバインバスターが直撃する寸前に飛び上がり、無傷で砲撃をかわす。 逆にディバインバスターを発射しているなのはには上に現れたバージルの攻撃をかわすことは出来ない。振るわれた一撃は三つに分裂し、小さな体を只の部品へと切り裂いて――― 「これも幻覚だと!?」 切り裂かれたなのはが消えていく。だが、先ほどとは違い斬った瞬間手ごたえを感じなかったバージルは、すぐさまなのはの居場所を探り、そして驚愕する。 ドッペルゲンガーとの入れ替わりがギリギリ間に合わなかったのか、バージルの描いた軌跡そのままに背中がバリアジャケットごと裂かれ、血を流している。 それでも、今ここで攻撃の手を緩めるわけにはいかないとばかりに、自身の周りに無数の光弾を浮かび上がらせている。 「Rock it!!」 「ちぃ!」 なのはの掛け声と共に飛来した光弾がバージルの周囲を高速で旋回する。なのはが展開したディバインシューター、その数なんと二十。 バージルも剣でそのうち十を叩き斬るが、残りの全てが同時にバージルへと襲い掛かり――― 「Blast!」 なのはの起動で大爆発を起こす。咄嗟に防御体勢を取ったものの、バージルとて全方位を完全に防御できるわけではない。 強烈な爆発はバージルの体を吹き飛ばし、それでも倒れぬバージルが受身を取った瞬間、輝く白光が目を焼く。 「行くよ!!」 「く……」 「ディバイン・バスター」 「「Ceruberus!!!」」 ダメージは意外と大きく、回避行動を取ろうとしたが言うことを聞かない。さらに、見ると体のあちこちが凍りついていた。なのはが得たケルベロスの力による凍結の効果である。 凍った手足に気を取られた瞬間、放たれたなのはの極大魔法が空間そのものを破壊しつくす勢いでバージルに襲い掛かった。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」 二度にわたるドッペルゲンガーの展開と入れ替わりに加え、一瞬ではあるがディバインバスターとドッペルゲンガーの同時行使、さらにディバインシューターとディバインバスター・ケルベロスの同時攻撃だ。 さすがに精根使い果たしたなのはが、地に下りて荒い息を上げる。 「これが、私の全力……」 今ので倒せていなかったのなら、なのはに勝ち目はない。多少強引ではあったが、不意をつく形でこれ以上ないくらいに決まった必殺の連携なのだ。 バージルが耐え切っていたのならば、次はもう無理。バージルに油断はない。あの剣を凌ぐなんて不可能だ。 「……やってくれたな」 「……やっぱり、こうなるよね」 だが、どこかこの展開を知っていた。なのはは大きく深呼吸して息を落ち着かせると、フラフラながらしっかりと立ち上がる。 立ち込める霧氷の中から現れたバージルは、一瞬バージル本人かどうかを見間違うほど禍々しいオーラを発している。それもそのはず、耐えられないと踏んだバージルは躊躇いなくデビルトリガーを引いていた。 その結果、彼自身の体に流れる悪魔の血が、ダメージを最小限にまで押さえ込んだのだ。 また、あまりに無茶な展開をしたために最後のディバインバスター・ケルベロスの威力が、全力時の半分程度だったことも理由として挙げられよう。 なのはのイメージではギリギリ最大出力が出せると踏んでいたが、どうやら幸運の女神はなのはに微笑まなかったようだ。 「小娘と呼んだことは詫びよう……貴様は十分な戦士だ」 デビルトリガーを解除し、バージルはなのはに賞賛を送る。たかが小娘と侮っていた存在にここまでダメージを負わされるのは、バージルにとっても完全に予想外だった。 「それは、どうも……それから、小娘じゃなくて、高町なのはです」 「高町、なのは……そうか」 だが、なのはにとってそんなことはどうでもいいのだ。次の瞬間に放たれるかもしれない死の一撃から逃れるべく、なのはは適当に返事をしながらも必死で次の策を考える。 「だが……少し足りなかったな」 「まだ、終わったわけじゃないよ」 焼け付く勢いで頭を回転させても、出てくるのは”死”の一文字だけ。リーチで勝るバージルに勝つには、初撃を何としてでも防ぐなり避けるなりしないといけない。 今また魔法をチャージしようものなら、その瞬間バージルの剣は飛んでくる。切り裂かれた背中の痛みに耐えながら、一瞬の後に飛んでくる死の運命に怯えながら、それでもなのはは毅然と立ち向かう。 「私は、諦めない。貴方が立ち上がるなら、何度だってぶっ飛ばしてあげるんだから」 「……ならば、やってみるがいい」 バージルの姿が消える。消えたわけではなく、ただ高速で移動しているだけなのだが、なのはの目には影すら映らない。 どこから飛んでくるか分からない、一撃貰ったらそれで終わりの剣。なのはは必死でシールドを展開し、死の未来へ抗う。 「無駄だ!」 しかし、バージルの剣をシールド程度で止められるはずもない。やすやすと切り裂かれたシールドは消滅し、シールドを消すために振るった剣がシールドだけでは飽き足らずなのはのバリアジャケットを貫通する。 裂かれた袖が風に舞い、ワンテンポ遅れて血が吹き上がる。 でも、まだ死んではいない。絶対条件だった初撃のやり過ごしを達成したのだ。得物が剣である以上、バージルは必ずなのはの側にいるのだから。 「終わりだ!」 「まだっ! Satellite!!」 レイジングハート・ケルベロスが凶悪な発光を見せたかと思うと、なのはの周囲に雹の嵐が吹き荒れる。バージルの姿が追えていなくても、これならば相手を見る必要もない。近くにいれば、それでいい。 「ふんっ!」 だが、雹が体に当る音が聞こえてこない。吹き荒れる風の音に混じって聞こえるのは、バージルが雹の弾丸を切り裂く金属音だけ。 銃弾すら切り裂くバージルにとって、数が多いだけの雹など脅威でも何でもないのだ。 だが、雹の処理に追われて手が封じられているのは紛れもない事実。その嵐の中心で、なのはは目まぐるしく周囲を探る。 「見つけた……!」 サテライトはバージルの姿を視界に入れるためだけに発動した技。次の一手は絶対の死角から飛んでいく強烈な一撃だ。なのはは渾身の力でレイジングハート・ケルベロスを地面に叩きつけ、腹の底から叫ぶ。 「貫け! Crystal!!」 叫びに応えるかのように地中を突き破って飛び出す氷柱。体を下から上まで貫いて余りある巨大なそれは、狙い違わずバージルの足元から炸裂し――― 「遅い!!」 突き刺さる直前、振るわれた刃によって全て根元から切り捨てられる。なのははそのあり得ない光景に目を疑うが、今止まることは死と同義。クリスタルでも無理ならば、それを上回る攻撃をするだけだ。 「It s cool!! Million Carats!!!」 なのはを護るように、そして、周囲の空間そのものを刺し貫くように突き上げられた無数の氷柱。サテライトと同じく全方向攻撃であるそれは、バージルが閻魔刀でなのはを狙っていたのであれば確実に直撃するであろう一撃。 「無駄だと言っている!!」 それすら突き上げる直前に全て切り捨てられた。人知を超えた悪魔の技に、さすがになのはも杖を強く握り締める。これで、自分が出せてバージルに当りそうな技は全て出し切ってしまった。 同じ技が二度通じる相手とも思えない以上、なのはに打つ手は事実上なくなったといえる。 「……まだ」 それでも諦めず、モード・ケルベロスとモード・ドッペルゲンガーの同時行使まで視野に入れた次の一手を模索しようとした矢先、切られて消え行く氷柱の一部が砕け散り、何事かと思う暇もなくなのはの太ももに灼熱の感触が走る。 「え……?」 何が起こったのかもわからないまま、直後脳天まで突き抜けた激痛に悲鳴すら上げられないまま身を震わせる。 耐え切れずに崩れ落ちたなのはが見たのは、自分の太ももに深々と突き刺さった幻影剣だった。だが、そんな絶体絶命の状況において天はなのはに味方をする。 崩れ落ちる際の倒れ方があまりにも絶妙のタイミングであったため、バージルが首を狙って振るった刃が本当にただの偶然だが空を切り、髪を数本斬り飛ばしただけに留まったのだ。 「悪運もここまでだ!」 それでも、バージルは止まらない。なのはの悪運に舌打ちするも、飛び上がり、今度こそ仕留めそこなわないよう逃げ場のない上から叩き潰そうと剣を振り下す。 そしてなのはは薄れゆく意識の中、最後の足掻きを見せる。 「……Go to the hell」 なのはの呟きは風が邪魔をしてバージルには届かない。今、この状況に限りなのはには絶体絶命の状況を覆すだけの力があった。 「ヴォルケイノ!!」 「なにぃ!?」 吹き上がった白光がバージルを吹き飛ばす。ダンテがなのはに預けたベオウルフ、その中でもなのはが振るえる最強の技が、もはや抵抗の術無しと防御を全く考えてなかったバージルに炸裂する。 「ぐうっ……ベオウルフ、だと……!」 「…………」 予想外の一撃に吹き飛ばされたバージルは、それでも倒れない。魔力の殆ど切れたなのはでは、ダンテほどの威力が出ないのも当然である。 しかも、どうやら本当に最後の一撃だったようだ。ベオウルフを抱きながら倒れたなのはは気絶しているようでピクリとも動かない。流れ出る血が、バリアジャケットと大地を徐々に赤く染めていく。 「……抵抗もこれまでか。俺とここまで戦えたこと、あの世で誇るがいい」 動けないなのはに無情にも振るわれる剣。狙い違わずなのはの首元に吸い込まれるように閃いて――― 「レディはもっと大事に扱うもんだぜ?」 横から飛び出してきたダンテの剣が、すんでのところでなのはの死を止めた。ダンテは受け止めた閻魔刀ごとバージルを吹き飛ばし、なのはに優しく微笑みかける。 「ホント大したガッツだぜなのは。まあ、頑張りすぎたな。ちょっと休んでろ」 「……ダンテさん」 一瞬本当に気絶していたなのはだが、澄んだ金属音と続いて聞こえてきたダンテの声に意識を取り戻す。だが、限界を無視して動かした体はどうやら完全にオーバーヒート状態にあるらしく、全く言うことを聞いてくれない。 それでも、なのははやりきった感いっぱいだった。 「後は、俺がやる」 「……お願いします」 言ったとおり、ダンテが回復するぐらいの時間は稼いでみせた。あとはダンテがやってくれる。なのははレイジングハートに傷の治療を任せてしばらく意識を飛ばすことにした。 「なに、お前がここまで頑張ったんだ。無駄にはしないさ」 ダンテの声が、やけに遠く聞こえた。 「……ダンテ」 「ハハハ、随分派手にやられたじゃねーか」 吹き飛んだバージルに悠然とリベリオンを突きつけるダンテ。先ほどの致命傷など何事もなかったかのようにしっかりと大地を踏み締めて、あたかも傷が完治して見せたかのように振舞う。 「……この短時間で完治だと? 笑わせる」 「だったら、試してみればいいじゃねーか。ホレ、かかって来いよ」 「ダンテェェェ!!」 「来な! バージル!!」 十分な助走をつけた疾走居合い、そしてそこから続く悪魔の連撃がダンテめがけて叩き込まれる。ついさっきまでは、受けることしか出来ず、それですら傷を負っていたバージルの攻撃。 「―――ハッ、つまんねぇ攻撃だなオイ」 「バカな……」 ダンテの嘲笑、それに続くバージルの呟き。 ダンテは人の目には映らぬ速度の疾走居合いを軽々かわし、かわした隙に放たれた連撃を全て叩き落していた。 「どうした、もう終わりか?」 「……ふざけるな!」 怒気も露に、バージルの剣が分裂したかのように迸る。ダンテはそれを涼しい顔で受け流す。そのあり得ない筈の光景にバージルは愕然とする。 (何故だ……! 確かに俺もダメージを負った。だが、それを差し引いたとしてもダンテのほうが重傷のはず!) バージルの考えはまさしくその通りだった。事実、ダンテの体は動いたために開いてしまった傷跡から再び血が流れている。 そもそも、いくら悪魔の血を引いてると言えど、あれほどまでの致命傷がこんな短時間で治るわけないのだ。傷が生む痛みは集中力を乱し、流れ出る血は体温と運動能力を奪っていく。 共に万全の状態で戦闘力が拮抗するのであれば、より深い傷を負ったダンテがバージルを凌駕することなどあり得ない筈なのに。 「遅いぜ?」 「ぐっ……!」 「オラァ!!」 「がああっ!?」 だが、現実はこうだ。今まで一度もクリーンヒットしなかったダンテの攻撃が遂にバージルを捕らえるまでに至っている。 その理由が分からない限り、このまま接近戦を挑むのは危険と判断したバージルが距離を取る。 「認めんぞ!!」 ダンテと同じように腹を薙がれ、肩をバッサリと裂かれて膝をつくバージル。 それでも折れず、放たれたのは幻影剣。ダンテを包囲するように浮いた六本が一斉に襲い掛かる。 「インフェルノォ!!」 だが、幻影剣が突き刺さる刹那、吹き上がった地獄の業火がダンテに牙を剥いた矢を悉く粉砕した。 揺らめく炎を呆然とバージルが見つめる中、悠々とダンテは歩いてくる。 「何故……何故だ!!」 「―――分かんねぇか? どうしてアンタが、俺に勝てないのか」 「……貴様ぁ!!」 「一つだけ、教えてやるよ。俺が今、こうやってアンタを追い詰めてるのはな」 ダンテはそこで一旦言葉を切り、自身の中で張り裂けそうになる思いと共に告げた。 「―――アンタがとっくの昔に、捨てちまった力のおかげさ」 人間だけが持ちえる、魂とそこに宿る底力だ。 「戯言を……!」 力だけを追い求め、力だけを信じてきたバージルにはとてもじゃないけれど認められないダンテの言葉。力を生むのは力、そう信じて、今までひたすら剣を振るってきた。それを疑うなど、自身の生そのものを否定するのと同じ。 「まあ、俺もついさっきまでは忘れてたんだけどな。なのはのおかげで思い出したよ」 ちらり、と後ろで寝ているなのはを見て、そしてバージルへと向き直る。 「だから、アンタは俺には勝てない。それは、俺が人間だからだ!!」 「ふざけるなぁ!!!」 「―――だったら、見せてみろよ。アンタの力はこんなもんじゃないだろう!」 「おおおおおおおっ!!!」 ダンテが走る。バージルもまた、なりふり構わぬ大声を上げてダンテに向かって疾走する。間合いは瞬く間に縮められ、互いの全てを賭けた渾身の一撃が交差する。 バージルがダンテを頭から二つにするほどの唐竹割、ダンテはバージルを腹から二つに割る横薙ぎ。互いに防御を完全に捨てた、相打ちになるはずの一撃。 (アンタは負ける。だが、それはアンタが弱いからじゃない。助っ人の活躍さ) それでも、ダンテは負ける気がしなかった。脳裏に浮かぶのは、自分の窮地を救ってくれた人物の姿。 ズタズタになりながら、それでもダンテを信じて戦った少女の姿がフラッシュバックする。 (アンタは強い、アンタは負ける。アンタが負けるのは俺じゃない、アンタは―――なのはに、負けるんだぜ!!) 剣が全く同時に振り抜かれる。しかし――吹き出た血飛沫は一人分。刃がまさに触れるその瞬間、バージルの目にすら映らぬほどの踏み込みを見せたダンテがバージルの一撃をかわし、そのままリベリオンが大きくバージルの腹を薙ぎ払ったのだ。 「……俺は、また負けるのか」 「だから言っただろう? 人の話は聞くもんだぜ」 膝をつき、息も絶え絶えなバージルにダンテが言う。バージルは、先ほどダンテが言っていた言葉を思い出していた。 「……人間の、力か」 「そうさ。情けない話だがな、俺はいつだって肝心なときには誰かに支えてもらってた。レディ、トリッシュ、オヤジ、そして―――」 「……高町、なのは」 絶体絶命のダンテを救い、魔剣士スパーダの血を引くバージル相手に一歩も引かず、結局バージルがダンテに対してまたしても遅れを取ることになった最大の要因。 「ああ、俺はいつだって一人じゃなかった。それは俺が人間だったから、人間として戦ったからだ、俺はそう信じてる」 「―――それが、スパーダの」 「魂の力」 「……なるほど、な」 同じように父を尊敬した。だが、バージルはその力を追い求め、ダンテはその魂を受け継いだ。 誰かを想い、その想いを力に変える人としての魂を。 「―――征け、ダンテ。魔帝はこの先にいる」 最後の言葉と、唯一現実のものだったアミュレットを残し、バージルは消えていった。ダンテはアミュレットを拾い上げると、しばし見つめた後に握り締め、笑みを浮かべて虚空を見上げた。 「やれやれ、相変わらず素直じゃない兄貴だぜ」 アミュレットをポケットに仕舞い、グースカ寝こけているなのはの元へ歩く。硬い地面の上で、これまた硬いレイジングハートを枕に眠るその顔は完全に少女のものだ。 「……こーやって見るとホント年相応のガキなのにな」 全く、あの信じられない程の意志の力はこの小さな体のどこから沸いて出てくるのやら。 ダンテは起こそうかとも思ったが、今回バージルを退けることが出来たのは間違いなくなのはのおかげだった。なら、好きなだけ眠らせてやろう、と思い直す。 最後の戦いに臨むのに、マイナス要素は残したくない。 「やれやれ」 コートを脱ぎ、なのはに掛けてやる。その横に腰を下ろすと、バージルの消えた箇所を見つめ、楽しそうに呟いた。 「―――これだから人間はやめられない、そうだろう?」 前へ 目次へ 次へ
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エキゾティックな屋台で本格カリーはいかが この屋台で提供されるカリーはとっても特別なんです。なぜって、ディズニー映画『アラジ ン』でもおなじみの空飛ぶじゅうたんが王国中から運び込んできたものだから。本格カリー を食べれば、気分はすっかりアラビアンナイトの主人公? 低アレルゲンメニューあり カウンターサービス 座席数…約850席 提供:ハウス食品株式会社
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test -- (yoshua) 2009-03-26 19 37 12
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Lyrical Magical Stylish Final Mission Jackpot 「フハハハハハハハハハ!! ハーッハッハッハッハッハ!!!」 倒れ伏す二人には最早目もくれず、ムンドゥスは狂ったように笑い続ける。 (…………) その光景を見る―――いや、感じ取っている―――存在があった。 (……全く、世話の焼ける連中だ) テメンニグルの屋上でダンテに斬られた男、バージルその人。と言っても、その場に実体があるわけではなく、幽霊のような存在なのだが。 どういうことかというと、肉体があったなら確実に死んでいた一撃だったが、幸か不幸かあのときのバージルは悪魔と同じ存在だった。 ムンドゥスが作り出した魔力、それに指向性を与え、仮初の体を得た存在。それがあのときのバージルだ。 ゆえに、体が失われても、その存在の根底を支えるだけ魔力が残っているのであれば、いずれ周囲の魔力を吸収して復活できる存在だったのだ。 もっとも、ダンテが与えたダメージはあまりに甚大で、こうやって意識を残しておくのが精一杯だったのだが。 (……だが、今なら俺は―――) 相変わらずひたすら笑い続けるムンドゥスを完全に無視して、バージルは二人へ目を向け、そして決めた。 「……あれ、私」 目を開けると、そこは真っ暗な空間だった。ドッペルゲンガーと戦った場所以上に暗く、周囲には何も見えない。魔法で照らそうと思ったところで、握っていたはずのレイジングハートがなくなっていることに気付く。 「……死んじゃったのかな」 レーザーを食らったところまでは覚えているが、そこから先の記憶がない。だとすれば、死んだと見るのが妥当か。 「あーあ、ゴメンねフェイトちゃん、クロノくん、ダンテさん」 今なお戦っているであろう友人たちに謝る。だが、死んだはずの自分が何故こうやって色々考えたり出来るのだろうか、そこに疑問を持つより早く、なのは以外の人物の声が響いた。 「……俺と互角に戦ったくせに、随分あっさりと認めるのだな?」 「あ、バージルさん。どうもこんにちわ。こんにちわ、であってますよね?」 「そんなのはどうでもいい。貴様は、死んだと認めるのか!?」 「認めるも認めないも……こんな何もない場所、死後の世界くらいしか考えられないじゃないですか」 そこにバージルが出てきたことも、そう認識させる要因の一つなのだが。なのはは周囲を見回しながら答える。 そんななのはにバージルは溜息一つ付くと、心底見下した表情でつまらなさそうに呟いた。 「……所詮、その程度か」 「そりゃ私だって死にたくないし、死んだなんて認めたくないですけど」 「ならば立ち上がれ。聞こえぬのか? 耳障りな笑い声が」 言われるままになのはは耳を澄ます。だが、何も聞こえない。 変に期待を持たせるな、バージルにそう文句を言おうとしたところで――― ―――ハハハハハハハハハハ!! ハーッハッハッハッハッハ!!!――― 「…………」 かすかだが、聞こえてきた。何がそんなに面白いのか、狂ったように笑い続けている。その哄笑になのはは顔を顰め、心底魔帝を蔑んだ表情を見せて一言。 「Too noisy(うるさいなぁ)……」 なのはの言葉を聞いたバージルが初めて笑みを見せる。それは、彼の弟ダンテとそっくりな、凶悪で、大胆で、不敵な笑顔だった。 「ならばどうする」 「決まってます。黙らせる」 いつの間にか手の中に現れていたレイジングハートを肩に担ぎ、バージルに負けないぐらいの不敵な笑顔を見せる。そこには、自分が死んだなんて思いは欠片も残っていなかった。 「―――いい返事だ。征け、高町なのは」 「あ、私の名前、覚えててくれたんですか」 「……まあな」 「嬉しいです。じゃあ、バージルさんもお元気で」 「ああ」 それと同時に、周囲の闇が消えていく。顔を上げると、まばゆい光が射し込んでいた。 「う……」 目を開くと、視界がぼやけていたが、そこは随分と見慣れた戦場だった。 痛いほどに握り締めていたレイジングハートを杖代わりに立とうとして、全身を激痛が突き抜ける。が、こんなところで跪いてなんていられない。 ―――この体には、まだ戦うだけの力がある。この心には、まだ戦うための意志がある。 「あああああっ!!!」 「……ほう、まだ立ち上がるか」 なりふり構わぬ咆哮で全身に喝を。ふらつく体、霞む視界、止まらぬ出血、残り少ない魔力。 状況は絶望的、それでも、未だ魂は砕けてはいない。なら、戦える。 「私は、諦めない。絶対に、諦めない!!」 「たった一人で我に歯向かう? 驕るな! 矮小な人間風情が!!」 ムンドゥスの怒気が衝撃波となってなのはを襲う。なのははそよ風が吹いただけでも倒れそうな体を無理矢理支え、さも可笑しいとばかりにムンドゥスの言を笑い飛ばした。 「一人? ハッ、笑わせないでよ。ダンテさんは絶対に立ち上がる。それに―――」 どんな状況でも不敵に笑って軽口一つ。 「私は、一人じゃない」 その姿は、本人を前にしたら口が裂けてもいえないけれど、ひそかに憧れた魔剣士そのもの。 「いつだって、一緒に戦ってくれる相棒がいる」 「Yes. You are the sweet master(あなたは最高だ)」 自分が負うはずだった傷を肩代わりして、全身ヒビだらけになりながらも共に闘うと言ってくれる。 「私を信じて、何も言わずに送り出してくれた家族がいる!」 いつもいつも、全幅の信頼を置いてくれる家族を裏切ることなんて出来やしない。 「強さで言っちゃえば圧倒的に劣る私を信じて、背中を任せてくれた人がいる!!」 たった数日共に闘っただけなのに、相棒と呼んでその背中を任せてくれたダンテ。 自分はこんなにも多くの人に支えられている。それなのに、自分勝手に諦めて道を閉ざすなんてそんなことは絶対に出来ない。 「だから―――仲間を平然と見捨てるテメェなんかに、絶対に負けてやるもんか!!」 「騒がしい小娘が……我を侮辱した罪、死すら生温い!」 「Com n winp!!(かかって来いよ、ノロマ野郎!!)ダンテさんが戻るまで、私が相手をしてやる!!」 締めとばかりに中指を突きつけ、飛んできたレーザーを空に舞って回避する。 「「―――Let s Rock!!」」 そしてなのはは無数のヒビが入ったレイジングハートを構え、最後の戦いへと挑む。 「あー、死んじまったのか……参ったな、ダディやマミィに何て謝りゃいいんだか」 目を開いた先は、何もない闇。周囲には何もなく、ダンテはリベリオンを失った自身の右手を眺めてぼやく。 ―――ふん、散々大口叩いて、結局お前も俺と同じだったということか――― 聞こえてきたのは懐かしい声。つい先ほどダンテに斬られて消えていったはずの兄のもの。 「まあ、そーいうことだな。ったく、情けない話だぜ」 それに反論する気力もなく、ダンテは首を振る。何と言われようが、自分は死んでしまったのだから。 「そうか、ならば俺は貴様の体を奪い、今度こそ魔帝を倒す」 その言葉と共にバージルが突如現れる。それでも、ダンテは特に何も思うところがなかった。 「好きにしてくれよ」 「……ふん、見下げ果てたヤツだ。だが、これを見てもまだ同じことが言えるか?」 「あん?」 バージルが閻魔刀を振る。すると、真っ暗だった周囲が一部裂け、そこについ先ほどまでの戦場が浮かび上がった。そこで見た、信じられない光景にダンテは驚愕する。 そこには、愛杖もろともズタボロになり、ダンテを失い、それでもなおムンドゥスに立ち向かうなのはの姿が映し出されていた。 「!!」 「聞こえるだろう。あの女の叫びが」 ―――ダンテさんは、絶対に立ち上がる!――― 「……耳が痛いな」 ―――私は、一人じゃない! 私を信じて、背中を任せてくれた人がいる!!――― 「……参った、こりゃ参ったぜ」 自然と口の形が笑みを象っていく。 かつて、自分はなのはに何と言った? 「俺がやるから安心しろよ」 かつて、自分は士郎と桃子に何と言った? 「なのはは俺が守る」 今までお前はどうやって生きてきた? 「でかい口叩いて、それを嘘にしないように生きてきた。地べたを這いずり回って、血反吐を吐いて、それでも言ったことだけは絶対に譲らなかった」 なのに、そうやって平然とくたばるつもりか? まだ何も終わっちゃいないと言うのに? 「……確かに、どうかしてたわ。俺」 そうだ。ここで倒れるというのは今までの自分を全否定するのと同じだ。いや、自分だけじゃない。自分を信じて、力を貸してくれた気のいい連中全員を裏切ることになる。 どんなに情けなく映ったとしても―――それだけは、絶対に出来るわけがない。 ―――Com n winp!!(かかって来いよ、ノロマ野郎!!)ダンテさんが戻るまで、私が相手をしてやる!!――― 「やれやれ、ホントとんでもねーガッツだな」 ダンテは笑って、いつの間にか手の中に生まれていたリベリオンを強く握り締める。その笑顔は、先ほどなのはが浮かべたものと全く同じだった。 「オーライ分かったよSweet Magical Girl. お前が折れないのに、俺が先に折れるわけにはいかねーよな」 折れていた心が蘇る。光を失った目に、再び戦意が満ちる。 「……ふん、手間のかかる弟だ」 「わりーわりー、さすがにこんな経験は始めてでよ」 ハッハッハ、とダンテは笑う。バージルもまた、ダンテの決意をかすかな微笑で受け止める。 「じゃ、行くわ。あんまり待たせちゃ悪いしな」 「ああ」 ダンテはバージルに背を向け、その背にバージルの声を受けながら、かすかに見える光へと向かう。 光は瞬く間に強くなり、周囲の闇を吹き払う。ダンテは眩しい光に目を細め、そしてバージルが小さく何かを呟いたのを聞いた、気がした。 「―――ああ、わかってんよ、兄貴。頑張ってくる」 目を開く。流れた血が入り込んだか、左目の視界が酷く悪い。そんな中で、ダンテはムンドゥスと、その周囲を飛び交う光、そしてそれを操るなのはの姿を捉えていた。 「……よし、行くか」 強かに打ちつけた頭は酷く痛む。半分塞がれた視界が気持ち悪い。血を流しすぎたか、剣を握る右腕が震えている。レーザーにぶち抜かれた腹は未だ白煙を上げ、覗き込めば内臓が見えそうだ。 それでも、気持ちは未だかつてないほど充実している。人の力の根源である魂が燃え滾っている。 「俺は、いつだって一人じゃない」 バージルに言った言葉を、そしてなのはが言っていた言葉を反芻する。俺が死んで、困るのは俺だけじゃない。なら、死ぬわけにはいかない。 ダンテは口を笑みの形に歪めると、愛剣と共に駆け出した。 「―――Let s Rock!!!」 「!! ダンテさん!!」 「! 貴様ぁ!」 「おおおおおおおっ!!!」 ダンテがいないことから、接近しての直撃を狙わざるを得なかったなのはに迫る魔帝の拳、それを雄叫びと共に弾き飛ばしたのはダンテのリベリオンだった。 「悪い、待たせたな!」 「全くです!」 「その分派手に行くぜ!」 ズタズタに傷ついた体のどこにまだそんな力が眠っているのか、ダンテの振るうリベリオンは全快時と何ら遜色ない、いやむしろ、強力になったまである。 そして、リベリオンが遂にムンドゥスの腹部にヒビを入れた。それまでと違う小さな、だが確実なヒビは、ダンテとなのはの攻撃がムンドゥスを着実に追い詰めていることを示している。 「行ける! レイジングハートッ!!」 「うおおおおっ!!」 闘志が爆発する。敵の体力も底なしではない、そしてその底が確実に近付いている。二人は裂帛の気合と共に、息も付かせぬ総攻撃を仕掛け続ける。 「があああああっ!!」 「どわっ!?」 「きゃあっ!」 凄まじい猛攻に耐えかねたか、遂にムンドゥスが絶叫を上げる。だが、そこから迸った衝撃波が二人の猛攻を止める。 「貴様らぁぁぁぁぁ!!」 「へっ、とっとと止めを刺さねーからだぜ」 「その通り。そんな慢心ばっかだから私たちに勝てないんだよ、間抜け」 「許さん、許さんぞぉぉぉぉ!!!」 ムンドゥスは両手に限界を超えた魔力を溜める。それは、魔力を糧に生きる悪魔にとって自身の寿命を縮める行為だ。それでもなお、捨て身の行動に出た理由はひとつ。 ―――決着のときは、近い。 「……さて、そろそろいいんじゃねーか?」 「ですね。あんまり出し惜しみするのもよくないし」 そして、二人もそれを受ける。いくらバージルに背中を押され再度戦えるようになったとは言っても、もとより分の悪い勝負だ、賭けの一つにでも勝たなければ勝機はない。 「そんなわけでダンテさん。しばらく時間稼いでくれますよね?」 「任せろ」 血塗れのダンテが不敵に笑う。その顔には一片の迷いもなく、ダンテ同様血塗れのなのはもまた、ダンテの全幅の信頼を不敵な笑顔で受け止める。 「無駄だと言うのがわからぬか!!」 「無駄かどうかは、テメエ自身で確かめな!」 魔力の篭ったムンドゥスの拳を同じく魔力を乗せたリベリオンで弾き返し、ダンテは真正面から斬りかかっていく。 フラフラのなのははそれを見届けると、痛みで消えそうになる意識を繋ぎ、霞む目を見開いて愛杖を一振り。気合は十分、リアクター・パージで消し飛んだために残り少ないバリアジャケットすら極一部を除いて魔力に再変換し、なのはは魔法陣を描く。 「まさか無理だなんて言わないよね? レイジングハート?」 「Too easy, and you?」 「もちろん、楽勝!!」 自身も愛杖も状態は最悪。それでも、この体を突き動かす魂だけは、何人たりとも挫くことなど出来やしない。 「レイジングハート・ドッペルゲンガー起動」 「Mode doppel ganger ready」 アフターイメージ、ドッペルゲンガーの使える唯一の機能。なのはの隣に全く同じ姿をした影が現れる。 「……いくよ。風は空に! 星は天に! 輝く光はこの腕に! 不屈の心はこの胸に!! レイジングハート、シーリングモードフルドライブ!!」 「Sealing mode full drive ignition. Get ready, Master?」 星をも打ち抜く破壊の光が二つのレイジングハートに収束していく。 「Lyrical Magical Stylish!! 咎人達に滅びの光を! 星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ! 貫け! 閃光!!」 地獄に二つの太陽が出現する。 限界まで収束された、なのは最大の切り札が発動の瞬間を今か今かと待ちわびている。 「ダンテさんっ!!」 「ウオオオッ!!」 ダンテはなのはが魔法のチャージを終えたことを知り、渾身の力でムンドゥスにリベリオンを投げつける。回転しながら突き進むラウンドトリップが周囲を巻き込む竜巻じみた攻撃なら、今回の投擲は外れることのない真紅の弓矢。 「グアアアアアアッ!?」 音速を超えたダンテのソードピアスはムンドゥスの生む力場を容易く貫通し、狙い済ましたようにムンドゥスの第三の目に深々と突き刺さる。 「派手にぶちかませ!!」 「Alright!!」 魔力を溜める、そのポイントであった第三の目を貫かれ、ムンドゥスの攻撃の手が止まる。ダンテはその隙に一っ跳びで魔法の射程外へ退避。 それを見届けたなのはは、限界を超えて集った魔力に最後のワンフレーズとともにレイジングハートを叩きつけようと振りかぶった。 ―――さあ、全ての準備は整った。魔帝に、人の真の力を見せ付けてやろう。 「スターライト――― これを撃ってしまったら、もう次はない。一瞬頭を過ぎったそんな後ろ向きの思考を不敵に笑い飛ばす。後のことを考えるなんて、随分余裕じゃないか。 通じなかったらどうする。次に過ぎるのはやはりネガティブな思い。だが、それすらもまた悪魔の笑みで吹き飛ばす。通じる、通じないではない、通すのだ。 自身に囁く弱気の虫を完膚なきまでに叩き潰し、なのはは万感の想いを込めて最後の魔法を解き放つ。 ―――ブレイカァァァァァァーーーー!!!!」 アフターイメージもまた全く同時に解き放った二筋の閃光は、全てを撃ち抜き無に帰す星の怒りだ。 ディバインバスターを遥かに超えた空間そのものを破壊しつくす断罪の剣が、ダンテの頭上を飛び越えムンドゥスに直撃する。 「ガアアアア!! この程度ォォォ!!」 目を焼く光の向こうから聞こえるのは、未だムンドゥスが健在であることを示す咆哮。 「ブレイク―――」 それを打ち消すが如く、残る魔力を全てレイジングハートへと注ぎ込む。 何もかもが光でかき消されていく中、未だ止まない砲撃は更に凶悪な発光を見せ、終盤に向けてその威力を上げていく。 「Come on!!」 ダンテはムンドゥスに突き刺さったリベリオンを呼び戻し、肩に担ぐいつものポーズを見せながら口笛を吹く。 「ヒュゥ、コイツはスゲーぜ。負けてらんねぇなぁ、相棒?」 自身の頭上を超え、あのムンドゥスの巨体を真っ向から消滅せんと迸るスターライト・ブレイカーに感嘆の声を漏らし、ダンテは止めの一撃を放つべく自身の魔力を練り上げる。 確かにとんでもない一撃だが、ムンドゥスを倒すには至らない、ダンテは何故だか分からないけれどそう直感していた。ならば、ソイツに止めを刺すのは俺の役目。 リベリオンが発光を見せるのと同時に、ダンテは自身の中に浮かんだトリガーに手を掛けた。 「―――シューーート!!!」 なのはの絶叫、そして最後に一際強く輝く星の怒り。 「はぁっ……はぁっ……ダンテさん!!」 「ウオオオオオオーーーーッ!!!」 目に痛い白光が収まったのち、その中から現れたムンドゥスは胸から下が吹き飛ばされて、それでもなお健在だった。 フィンで浮遊するための魔力すら使ってしまったなのはは地上に跪き、急激な消耗で一気に消し飛びそうになる意識を必死の思いで掻き集め、ダンテの最後の攻撃を見守る。 なのはが見守る中、一直線にムンドゥスまで突き進んだダンテは遂に、手を掛けていたトリガーを全力で引いた。吹き荒れる魔力、リベリオンの装飾が凶暴に発光し、ダンテの姿が人間から悪魔のそれへと切り替わる。 スパーダとも違う、どこか人間ダンテを感じさせるその力。それはまさしく、最強の魔剣士スパーダの魂を受け継いだ、魔人ダンテの姿だった。 溶岩に崩れ落ち、随分と頭が低い位置に来たムンドゥスを足場に飛び上がり、エア・ハイクを使って更に高く飛び上がる。 「Sweet Dream(おネンネしてな)!!」 遂にムンドゥスの上を取ったダンテは、あまりの光景に目を剥くムンドゥスに中指を突き立てると、全身の力を込めてリベリオンを振り下ろした。 「オオオオオオーーーーーーッッ!!!」 「ガアアアアアアアアアア!!」 ムンドゥスの頭に突き刺さる死の一撃。ダンテの放つ業火のような真紅の魔力が周囲一体を染め上げる。荒れ狂う魔力がスパークを起こし、ダンテの攻撃が凄まじい威力であることが容易に見て取れる。 それでも、ムンドゥスは倒れない。なのは最強の一撃に耐え、今なおダンテ最強の一撃を受け続け、それでも膝を折らない姿はまさしく魔を統べる者だった。 「ダンテさん……頑張れ!!!」 薄れゆく視界の中、なのはは掠れる声で叫ぶ。力が全てを支配するこの場において、それはあまりにも弱弱しく。 ―――だが、期せずして放った言葉は、偶然にもバージルがダンテに向けたものと同じ。 兄と、相棒。二人の同じ声援が、ダンテの背を最後に強く押す。 当事者にしてみれば随分と長い、されど一瞬の停滞の後、リベリオンがムンドゥスをそのコア諸共真っ二つに引き裂いた。 「グアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」 凄まじい絶叫が周囲の空間そのものを揺るがす。それは、魔帝ムンドゥスの断末魔の叫び。 「我は……諦めぬ……何度でも……蘇って……見せようぞ……」 最後の恨みを残してムンドゥスが溶岩の中へ消えていく。それを見届けたダンテは魔人化を解除し、リベリオンを戻して不敵に笑った。 「へっ、何度だってぶっ飛ばしてやるさ」 魔帝が倒れたことにより、この空間そのものが崩壊する。以前の戦いでそれを知っていたダンテは踵を返すと、慌てて崩れ落ちたなのはの元へと駆け寄った。 すでに崩壊の予兆である地震が起き始めている。時間はあまりなさそうだ。 「ヘイ、しっかりしろ! 寝てる場合じゃねーぞ!」 「う……」 ペシペシ頬を叩くが、全く起きる気配がない。レイジングハートも杖の形こそしているが、応答がない。 それもそのはず、魔力が完全にゼロになってしまったのだ。少し寝てれば回復するのだろうが、今はその少しの時間も惜しい。 「ち……しょうがねーか」 なのはを抱えて外まで向かう、というのも考えたが、魔帝が力を失っても他の悪魔が消えるわけではない。 時間制限もあるし、残された悪魔がダンテとなのはを崩壊の巻き添えにせんとばかりに襲い掛かってくるのも目に見えている。そんな中、なのはを抱えて突っ走るのはさすがに無謀だ。 ダンテは唇を噛み切ると、相変わらず起きる気配のないなのはのそれに躊躇なく重ねた。 「……ン」 「あ……」 ダンテの血がなのはの口に流れ込む。意識が消えていたなのはだが、ダンテの血が無理矢理流し込まれた瞬間―― 「!!!!」 ビクン! と大きく体が跳ねた。強引に流し込まれたダンテの魔力が体内を蹂躙している。 だが、それも一瞬。周囲に霧散した魔力をも自身の魔力に変換できるなのはにとって、人の魔力を自身の魔力に変換するのは容易い。無意識ながら体が勝手にそれを行い、体に僅かだが力が戻る。 「……よぉ、寝覚めの気分はどうだ?」 「……最悪です」 僅かに開いた目から見えるのはダンテのアップ。なのはは今の心境をなんの躊躇いもなく口にした。 それを聞いたダンテは、ようやく調子が戻ってきたとばかりに笑い出す。 「ハハハハ、ソイツは結構。寝るのは布団まで我慢しな」 「……終わったんですよね?」 「まだだ」 「え」 「先生に教わらなかったか? 遠足は帰るまでが遠足だ。そら、とっとと行くぜ!」 地震が徐々に激しくなってきている。この場所も、今まで通ってきた場所も、いつまでもっているかなど分かったものではない。 なのはもまた、何となく起ころうとしていることを理解し、そして慌てて飛び上がる。 「ダッシュだ! しっかりついて来いよ!!」 「ダンテさんこそ! 転んでも待ちませんからね!!」 不敵な笑みを浮かべ、ダンテとなのはが全力で駆け出した。 大地を揺るがす爆炎が、周囲一体を真っ赤に染める。地球から程よく離れた無人世界の一つに魔界の門を空間ごと転移させたのは良かったが、後から後から際限なく溢れ出る悪魔を食い止めるにはアースラの乗組員だけではあまりにも人手が足りなかった。 「はぁ、はぁ……」 フェイトは荒い息をしながら、バルディッシュを強く握りなおす。リンディの機転により、門を無人世界に移してから一日。 休むまもなく増え続ける悪魔をひたすら狩り続けていたのだ。体力も魔力も既に限界を突破している。 それでも、なのはが出てくるまで、最悪の手段をとるわけには行かない。既にアースラの横で待機している巨大戦艦、それに装備されたアルカンシェルが、門を世界ごと吹き飛ばす準備を終えている。 フェイトたちが抑えきれないと分かったら、なのはたちを犠牲にしてでも門を消滅させるということだ。この世界が魔界になり、そして周囲の世界へ悪魔が飛んでいくのを看過するするわけにはいかないのだ。 「なのは……」 「フェイト、後ろだ!!」 「!!」 朦朧とする意識の中、親友の無事を祈る心だけが支える体。さすがに、そろそろアースラに戻って回復したほうがいいかもしれない。このままでは、いつ倒れるか分からない。 そんな状態のフェイトに、聞き慣れた声で突如叫ばれた己の名前。振り返ると、切り捨てたはずの死神が、フェイトに向かって鎌を振り下ろそうとしていた。 「あ……」 その奥に、必死の形相で助けようとこちらに向かうクロノが見える。でも、ちょっと間に合わないな……なんて他人事のように感じながら、フェイトは鎌の切っ先を眺めることしか出来ず――― 「Divine buster Ceruberus」 第三の声とともに迸った白光が、死神を一撃で氷漬けにし、それだけでは飽き足らないとばかりに凍ったまま粉々に吹き飛ばす。 続いて聞こえてきたのは、ここを戦場だと思っていないかのような暢気な会話。 「随分違う場所に出たが、砂しかねーな」 「良かったじゃないですか海に落ちなくて。ダンテさん、飛べないでしょう?」 「おいおい、そーいうときは運んでくれるもんだろう?」 「イヤですよ」 「え……な、のは?」 今のフェイトを救った一撃の声、それは今まで何度も聞いた、なのはの相棒レイジングハートのもので。その後聞こえてきた会話は間違いなくなのはとダンテのもので。 フェイトはふらつく足で門のほうに向き直る。クロノもまた、見覚えのある魔法に周囲の状況も忘れて門の方を見る。 「なの……は?」 歩いてくるのは二人の影。そのうちの一方は自分の親友であり、待ち焦がれていた人物であるはずなのに、フェイトはすぐにそれをなのはだと断定できなかった。 「What s wrong? フェイトちゃん。まるでお墓から出てきた死人でも見るような顔だよ?」 「そりゃ違うぜなのは。俺らを向かえるパーティの準備が終わんなかったから、せめて笑わしてやろうとあんな面白い顔してるのさ」 「あー成る程。それじゃあしょうがないか」 完全に周囲を気にしていない会話。周囲を覆う悪魔の群を一顧だにせず、二人は悠然と歩を進める。そんな二人が徐々に近付くにつれ、その凄まじい姿が露になる。 ダンテは、素晴らしい銀髪を半分以上血に染め、さらに頭から血を流している。頭から流れ出る血が顔を半分覆っており、さながらピエロだ。 真っ赤なコートは、元々赤かったのか血で染まったのか分からないぐらい血で染め上げられており、さらにところどころ開いた穴からはどう見ても致命傷というほどの傷跡が覗いている。 なのはもまたダンテに負けず劣らず凄まじい様相であり、頭から流れた血が顔を伝い、唇からさらに一筋、そして頬にも裂傷と流血が見て取れる。 可愛らしかったバリアジャケットはその殆どが消し飛んでおり、僅かに残ったそれも血で赤く染まり、さらに焦げ跡や斬られた跡が見える。 体がむき出しの部分にも無数の裂傷が刻まれ、白い肌を毒々しい赤が這っている。 だが、フェイトやクロノは二人の凄まじい様相よりも、何よりもその佇まいに目を奪われていた。 リベリオンとレイジングハート、自身の得物を肩に担ぎ、浮かべる笑顔は今まで見たことも無いほど大胆で、不敵で、そして凶悪に歪んでいた。悪魔も泣き出す、そんな表現がぴったりの凄惨な笑顔だ。 「ところでダンテさん、私、さっきのでスッカラカンなんですけど」 「ハハハ、そーいう時のためのコイツさ。片方使うといい」 「そうさせてもらいます」 戦闘の衝撃で高台になった砂地を歩くなのは。その隣、逆に窪んだところを歩くダンテ。上手い具合に身長差が消え、ちょうど二人の頭が同じぐらいの位置にある。 「それよりなのは、キメ台詞は覚えてるか?」 「あの品のないキメ台詞ですよね? 覚えてますよ。非常に残念ながら、ね」 「ソイツは結構。オーディエンスに見せ付けてやろうぜ」 自分たちを見る奇異と畏怖の視線はまるで意に介さず、ダンテとなのはは笑みを更に歪めて立ち止まり――― 「!! なのは、うし」 門から、とてつもない殺気が吹き上がる。ワンテンポ遅れて飛び出してきた、巨大な”何かが”ダンテとなのは目掛けて一直線に飛び掛るのを見て、フェイトは思わず声を張り上げかけて。 それよりも早く、ダンテがホルダーに収めていた拳銃を一挺ずつ抜き放った二人が背中合わせに最後のポーズを決め、飛び出してきた半身すらないムンドゥスに止めの銃弾を叩き込んだ。 「「Jack pot!!」」 前へ 目次へ
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水曜ダンジョン マッドダンテ 死霊種族の進化素材、火属性のスキル書などがドロップします。 アルビノモンスターの出現率やアイテムドロップ率はステージ難易度が上がるほどアップします。 解放条件 第1章「魑魅魍魎の主」クリア スケジュール 隔週水曜 0 00~23 59 隔週日曜(1時間ローテーション時) ①9 00~9 59 ②22 00~22 59 難易度 スタミナ 獲得EXP 獲得GOLD 弱点属性 初級 5 400 800 火属性 中級 10 840 1,600 火属性 上級 15 1,360 2,600 火属性 超級 20 2,160 3,600 火属性 地獄級 30 3,440 5,400 火属性 超地獄級 40 4,760 7,200 火属性 絶級 50 4,800 12,000 火属性 初級~超地獄級 マッドダンテ 種族 タイプ 属性 レア コスト HP 攻撃 魔力 防御 素早 パッシブスキル名 パッシブスキル(最大時) 死霊 魔法 雷 ★4 20 1748 908 1967 969 966 雷精霊の恩寵【大】 【全】雷属性攻撃1.5倍 詳細 【水曜】曜日ダンジョン、強襲オールスター②、死霊アルビノオールスターズ マッドダンテ(アルビノ) 種族 タイプ 属性 レア コスト HP 攻撃 魔力 防御 素早 パッシブスキル名 パッシブスキル(最大時) 死霊 魔法 雷 ★4 20 1748 908 2164 969 1043 雷精霊の恩寵【大】 【全】雷属性攻撃1.5倍 詳細 【水曜】曜日ダンジョン、死霊アルビノオールスター アルビノはボスを倒した後に低確率で出現(難易度が高い方が出現率も高い) ドロップアイテム(初級~超級) 結晶石 進化素材:死霊の魂、死霊の超魂、虹の超魂 進化スキル書:【怨呪】炎斬の書、【怨呪】炎の書 スキル書進化素材:強進の勾玉、強進の珠、火の宝珠、火の宝玉 SRスキル書:ダブルサンダーの書 ドロップアイテム(地獄級・超地獄級) 結晶石 進化素材:死霊の魂、死霊の超魂、虹の超魂、死霊の極魂 SRスキル書:ダブルサンダーの書 ブレイク系スキル:炎魔崩波(地獄級ボス)、火攻崩波(超地獄級ボス)、防崩火波(アルビノ) 超級まではモンスター進化素材、スキル書進化素材などがドロップ。 地獄級からはボスがフォース(Mフォース)ブレイク、アルビノボスがガードブレイク系のスキル書をドロップします。 極魂もドロップしますがブレイク系スキル書、極魂のドロップ率はかなり低いです。 絶級 マッドダンテ(アルビノ) 種族 タイプ 属性 レア コスト HP 攻撃 魔力 防御 素早 パッシブスキル名 パッシブスキル(最大時) 死霊 魔法 雷 ★4 20 1748 908 2164 969 1043 雷精霊の恩寵【大】 【全】雷属性攻撃1.5倍 詳細 【水曜】曜日ダンジョン、死霊アルビノオールスター バスターダンテ 種族 タイプ 属性 レア コスト HP 攻撃 魔力 防御 素早 パッシブスキル名 パッシブスキル(最大時) 死霊 魔法 雷 ★5 25 1940 1008 2402 1066 1148 雷精霊の恩寵【極】 【全】雷属性攻撃1.85倍 詳細 【進化素材】猿帝聖ハヌマーン(アルビノ)、ヴリトラ絶滅種(アルビノ)、大精霊ラタトクス(アルビノ) 絶級ではアルビノが固定ボスとして出現、倒した後に低確率で★5が出現します。 ドロップアイテム(絶級) 進化素材:虹の超魂、死霊の極魂、族長の超魂、神の魂、神の超魂 ブレイク系スキル書:超炎魔崩波(アルビノ)、超防崩火波(★5) 絶級ではブレイク系スキルの上位版が低確率でドロップします。 曜日ダンジョン 1週目 月曜 大司教ルーシー 火曜 デスクジャタ 水曜 深死海棲姫レテナ 木曜 大凶神キュウキ 金曜 ヴリトラ絶滅種 土曜 極黒曜トリポカ 日曜 メイデンガール 曜日ダンジョン 2週目 月曜 豪炎剣神ラックル 火曜 大精霊ラタトクス 水曜 マッドダンテ 木曜 兇サラシナ邪姫 金曜 デスカオスギドラ 土曜 猿帝聖ハヌマーン 日曜 1時間ローテーション| 今日 - 昨日 - 合計 -
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Lyrical Magical Stylish Mission 13 Arc Enemy 「―――これだから人間はやめられない、そうだろう?」 残す敵は後一体、次が最後の闘いになる。ダンテは弾倉を交換し、剣に付いた血糊を拭きながら隣で昏々と眠り続けるなのはを見て、軽く吹き出した。 「ったく、大したモンだよ。イヤマジで」 眠るなのはの頭を軽く撫でる。 「……でも、サンキューな。助かったぜ」 何か、静かになった。 そして、ひんやりと感じる下となぜか暖かい上。そういえば何故自分が寝ているのかも思い出せず――― 「!!」 「お早う、寝ぼすけ」 なのはが突然ガバッと跳ね起き、焦点の定まっていない目でダンテを見て、頭をブンブンと振って眠気をすっ飛ばした後、もう一度ダンテを見る。それがバージルでないことに安堵の溜息一つ。 「…………」 「何だよ、惚れたか?」 「……まさか」 銃をクルクルと玩んでいるダンテの冗談は、なのはにとって思考がはっきりとしない寝起きにはキツかった。 「……どのぐらい寝てました?」 「んー……二時間ぐらいか?」 「Exactly, one hour, fourty-five minutes, twenty-eight seconds.(正確には、1時間45分28秒です)」 「……そんな寝てたんだ」 そのおかげか、驚くほど体が軽くなっていた。周囲に満ちる濃密な魔力が回復を促進したのか、家で二時間寝たときより遥かに回復している。 「ところで、バージルさんは?」 「消えたけど、何でだ?」 「普通こういう場合って、改心して手伝ってくれるじゃないですか」 「……漫画の読みすぎだな」 「ダンテさんに言われた……」 たった数日滞在しただけで高町家の漫画を全部読破したダンテに言われるのは、なのはにとって甚だ心外だったようだ。相手にするのを諦め、なのははダンテにつられて上を見上げる。 「……行きましょうか」 「だな」 二人が睨むのは天に開いた穴。バージルが言うには、そこが今回の終着点だ。なのははフィンを駆り、ダンテは周囲に浮かぶ彫像を蹴って上に飛ぶ。 穴から感じるのは、今まで周囲にあったものとは比べられないほどの圧力と瘴気。 ファントムとグリフォンを退けた後に僅かだが邂逅した魔帝のもので間違いないだろう。 「「Let s get crazy yeah!!」」 凄まじい魔力と重圧にも全く恐れを見せず、二人は獰猛な笑顔を見せてそこに飛び込んだ。 「来たか……ここで積年の因縁、断ち切ってくれる!」 「ああ、そーだな。いい加減テメーの顔も見飽きたぜ!」 空間に開いた穴を突き抜けて、二人がたどり着いたのは一瞬宇宙と錯覚するほどの深い闇に覆われた深淵の世界。魔帝ムンドゥスが生み出した戦闘空間である。 「さあ行くぜ? Are you ready!?」 そして、爆音と共にダンテの姿が変化する。闇の波動を纏ったその姿は悪魔そのもの、思わず隣にいたなのはがビビッてしまうのも無理はないだろう。 「……ダンテさん?」 「It s Alright.(問題ない)俺は俺だ、信じろ」 人間の姿をしていた頃に比べ、彼の念話同様酷くノイズ掛かって聞き取りにくくなったダンテの声。それでも、そこに秘められたダンテらしさだけは全く失われておらずに。 「ちょっと驚いただけですよ、そんな大げさな」 なのははすぐさま頭を切り替え、最終決戦を前に失態だったと少しだけ悔いる。それでも、次の瞬間そんなものをダンテと共に笑い飛ばすことは忘れない。 短い時間の中で築いてきた二人の絆は今さらどんな理由があったところで崩れるものではなかった。 「ならいい。派手にぶちかまそうぜ!」 「Yeaaaaaaaaaaaaaah!!」 上下左右の感覚がどうなっているかすら定かではない空間に何の恐れも見せずに舞い上がる。闇の中において輝く白と、闇の中においてその闇より更に深い黒は、大きさこそ魔帝の足元にも及ばない。 それでも、両者から発する絡み合った力の波動は魔帝に十分匹敵するレベルで周囲に吹き荒れていた。 「俺様からのプレゼントだ。遠慮しないで受け取りな!!」 「GYAAAAAAAAAAAAAA!!」 開幕の合図はダンテが呼び出した火龍。空間を揺るがすほどの咆哮を上げながら遥か彼方に見えるムンドゥス目掛けて突き進んでいく。 「ディバインバスター・ダブル!!」 その火龍に沿うように目を焼く二重の白光が螺旋を描いて唸りを上げる。ドッペルゲンガーとの同時行使によって全く同時に放たれた二筋の閃光がムンドゥスを護るように展開される岩石や魔力弾を容赦なく塵に変えていく。 「グオオオオオオオッ!!」 姿は随分遠いのに、その絶叫ははっきりと聞こえてくる。二乗のディバインバスターによって守りを無力化され、そこに直撃した膨大な魔力によって生み出された火龍。 いくら魔を統べるものといったところで、あの直撃を受けてダメージがないわけない。 「シャアアアッ!!」 ド派手な開幕の合図、その結果を見届ける前にダンテは両の手から火炎弾を滅茶苦茶に飛ばしながら、ムンドゥス目掛けて空間を疾走する。 「Fire!!」 なのはもまた、ダンテを守護するように、そしてムンドゥスの守りを邪魔するようにディバインシューターを操りつつ、ダンテのやや後ろをムンドゥスの巨体目掛けて駆ける。 自分より遥かに巨大で、力強い相手に挑む。だというのに、その目には微塵の恐れも感じられない。 「ヌアアアアッ!!」 初っ端の大ダメージから立ち直ったムンドゥスが、二人の接近を許すまいとレーザーを放ち、岩石を投げつけ、雷を落とし、そして流星を降らせてくる。 「ガアアア!!」 「どーこ狙ってるの!」 「Flash move」 それでも、二人は止まらない。なのははバリア、ダンテは漆黒の翼でレーザーを弾き、岩石はダンテの火炎弾となのはのディバインシューターが打ち砕き、雷撃はドッペルゲンガーの操るライトニング・プロテクションが無効化。 そして流星はどちらが流星か分からないほどの加速で掠らせることすら許さない。 「ウオオオオオー!」 ダンテの火炎弾の連射は留まることを知らず。ムンドゥスもまた、ダンテの放つ火炎弾をレーザーで迎撃しようと試みるが、なのはの駆るディバインシューターがそれを阻止する。 「Blast!!」 正確無比に誘導された光弾が、無数のレーザーを放つビットのような黒球を発生の瞬間に悉く爆砕する。遮るものがなくなった火炎弾は巨大すぎて回避運動の取れないムンドゥスに片っ端から直撃していく。 「させぬわぁ!!」 雨霰と降り注ぐ攻撃にも、全く怯みを見せない二人に業を煮やしたムンドゥスが怒号を放つ。それと同時に周辺を覆いつくしていたムンドゥスの攻撃が一旦止まる。 「!? 諦めた?」 「違う! 大技来るぜ、避けろよ!」 「塵と―――」 一瞬の停滞。だが、ダンテは次に何が来るか知っていた。そしてなのはもまた、脊髄に氷柱を差し込まれたような悪寒を背筋に感じ、急加速で無理矢理に軌道を変える。 「―――化すがいい!!」 ディバインバスターを遥かに超える極太の熱線が、空間そのものを断ち切らんと迸る。魔帝ビーム、なんの捻りもない名前だが、この戦場でムンドゥスが放つ攻撃の中では単発の威力が最も高い。 さすがのダンテもこれの直撃を受けたらタダでは済まないし、なのはなど掠っただけで半身が吹き飛ぶほどの威力を内包している。 「……とんでもない、ね。でも、当たらなきゃ意味がない!」 凄まじいエネルギー量を肌で感じつつ、なのはは眼前のムンドゥスを睨む。敵の切り札は知れた、発射のモーションやタイミングも覚えた。このまま勝負が進むなら、負ける要素はない。 「ウオオオー!!」 「はあああっ!!」 そして、開幕直後は無限に思われた両者の距離、それをあっという間に詰めきった二人がここぞとばかりに大技を放つ。 「ディバインバスター・ダブル!!」 まずはなのは。二条の閃光は螺旋を描いた後融合し、蒼白い輝きを放ちながらムンドゥスが体の防御に回していた天使のような翼、両翼の重なる一点を槍の如く貫通する。 「オオオーッ!! ヴォルテックスッ!!」 その先に見えた、ムンドゥスのコア。ディバインバスターに追随する形で滑空していたダンテが、雷撃を纏った渾身の回転体当たりをムンドゥス最大の弱点に叩き込む。 身を護るビットを全て破壊され、最後の砦であった翼に大穴が開いた状況で、スパーダと化したダンテを止める術をムンドゥスは持っていなかった。 「グガアアアアッ!!」 「オオオーーッ!!」 コアに直撃してなおその回転を止めないダンテと、その破壊の力に抗うコアが凄まじい発光現象を起こし、闇に染まった空間全体に世界が太陽を取り戻したかのような閃光が走る。 「やった!?」 「いや、まだだ!!」 なのはの耳に、ピシリ、とコアに亀裂が走る音が届いた。だが、その結末を見届けるより早くダンテが翼を広げ、なのはに覆いかぶさってくる。 「ダンテさん!?」 「歯ぁ食いしばれよ!!」 「ガァァァァァァァーーー!!」 体内を蹂躙する想像を絶する激痛がそうさせたのか、周囲には無数の流星群。大技を放った直後の二人に回避する手段はない。 「グアアアッ!」 「きゃああっ!」 二人は成す術もなく流星に叩き落され――― 「効いたぜ……」 「痛たた……」 叩き落された先は最終決戦の場、溶岩の上に突き出した足場が無数にある、火山の中と勘違いするような灼熱の戦場だった。撃墜された二人は、自身もまた傷つき、溶岩の中に堕とされたムンドゥスと対峙する。 姿こそ先ほど変わらず、禍々しい殺気を放っている。だが、先ほどと違うのは覇気だ。押し潰されそうになるほどのプレッシャーを生んでいた覇気が随分と衰えている。 ドッグファイトで二人が与えたダメージは、形こそ見えないけれど確かにムンドゥスを追い詰めている。 (……チッ、こっから先はテメーでやれってか、クソ親父。上等じゃねーか、やってやんぜ!) 急激にエネルギーが失われていくスパーダに内心舌打ち一つ、だが、それを面に出すことはしない。今はいい流れ、この流れを維持して攻勢をかけたいところだ。 ダンテは内心の葛藤を全く感じさせないそぶりで両手を広げ、ムンドゥスを挑発する。 「ハハハ、つまんねー見世物だったな?」 「あんなのはただの遊びよ、貴様等を纏めて叩き潰すにはこの場のほうがふさわしい」 「強がりはたいがいにしときな。さあムンドゥス、年貢の納め時だ。ぶっ飛ばしてやるぜ!!」 ダンテがリベリオンを抜き放ち、中指を立てる。なのはもまた、想像していたより遥かにあっさりムンドゥスを撃墜できたことに士気がレッドゾーンを振り切っていた。 レイジングハートを肩に担ぎ、投げつけるのは嘲りの言葉。見せ付けるのは不敵な笑顔と馬鹿にした行動だ。 「ホント、その三つの目は飾り? でかいだけじゃ、私たちはどうにも出来ないよ」 ダンテが中指を立てるなら、なのはは親指を落とす。二人の態度にあっさりプッツンしたムンドゥスが怒りの咆哮を上げた。 「―――前と同じになると思うな、小物が!」 第二ラウンドの先制はムンドゥス。繰り出された魔帝の拳が、二人の立っていた大地を爆砕する。 それが合図となり、二人は最後の決戦に挑むべく各々行動を開始した。 「おおおおおっ!!」 ダンテは前へ。 「行くよ、レイジングハート!」 「Let s get crazy yeah」 「……分かってるじゃない! ディバインバスター!!」 なのはは後ろへ。 魔界に来てからあまりなかった、二人のコンビネーションが炸裂する。 「鬱陶しい……」 ダンテの頭上を飛び越えて突き進んだディバインバスターは魔力を込めたムンドゥスの左手に弾かれる。 先ほどは効いた一撃があっさり無効化されたことになのはは驚愕するが、そんなのお構い無しとばかりに飛び込んだダンテのリベリオンがムンドゥスに直撃する。 「効かぬ!」 「ちぃ!」 完全に直撃した一撃すら全く歯牙に掛けず、ムンドゥスは再度ダンテを拳で潰そうとする。愛剣の一撃が殆どダメージになっていないことに歯噛みする暇もなく、ダンテはその一撃をかわす。 「消し去ってくれる!」 ムンドゥスの左手と背中から大量のレーザーが迸る。無差別に放たれたそれは、回避行動の結果足場の端に追い詰められ回避行動の取れないダンテと、やはり魔法の発射直後で大きな魔法を使えないなのはへと襲い掛かる。 「うおおおっ!!」 そんな大量のレーザーをダンテは神速の剣捌きで全て薙ぎ払い。 「フラッシュムーブッ!」 なのははシールドを解除、その分の魔力をフィンに叩き込んで一発の被弾もなくかわしてみせた。 「もう一発行くよ、ディバインバスター・ケルベロス!!」 ディバインバスターは弾かれた。なら、弾かれるのを承知で放つ。ダメージが与えられなくても、弾いた腕を凍結させることが出来ればダンテが攻撃に集中できる。 突き進む青白い一撃がレーザーを放った左手へと着弾する。だが―― 「小賢しいわぁ!!」 「くっ……」 凍りついた左腕はすぐさま真下の溶岩へと叩きつけられ、あっという間に元に戻ってしまった。さらに、ムンドゥスが溶岩の中から生み出した炎の龍が咆哮を上げてダンテへと突き進む。 「Shit!!」 全身が溶岩で出来ている相手に突撃されてはたまらない。ダンテは慌ててムンドゥスへの攻撃を中断すると、龍を横から斬り飛ばして大きく距離を取る。 切った際に飛び散った溶岩が服につき、煙を上げて周囲が溶けるが一々気にしている場合ではない。 「Satellite!!」 「サンキュー!」 下がったダンテと入れ替わるようにしてなのはが前に出る。狙いをダンテからなのはへと変えた龍が顎を大きく開いてなのはへと突撃し、その直前放たれたサテライトが龍を吹き飛ばす。 効果は抜群だったが、なのはもまた飛び散った溶岩を受け、バリアジャケットが焦げ落ちる。 「ハァッ!!」 吹き飛んだところになのはの横を疾走してきたダンテの一撃。頭部を切り離された龍は咆哮を上げながら元の溶岩へと還っていく。 だが、不意打ち気味の新たな相手を打ち倒したことを喜ぶ暇もなく、ムンドゥスからの攻撃が襲い掛かる。 「いつの間に……」 「めんどくせぇなぁ、おい!」 ムンドゥスを護るように浮く太陽の如き輝きを放つ白い球。そこから発射される無数のレーザーが襲い掛かる。これもまた、先ほどと同じようにダンテは弾き、なのはは避けるが、ムンドゥスの連撃に反撃の暇を見出せない。 その際にダンテは弾ききれなかったレーザーを受け、受けた場所から血を吹き出し、なのはもまたかわしきれなかったレーザーが掠めた場所から出血する。 「ヌンッ!」 防御に手一杯の二人を尻目に、ムンドゥスの左手から放たれた赤い刃が衝撃波を伴い、大地ごとダンテを真っ二つにせんと迫る。 「しつけぇ!」 一瞬避けよう、と思ったが、それ以上にどこかで攻撃のターンを掴まないとジリ貧だと確信したダンテがムンドゥスの放った赤い刃へと自ら飛び込む。 なのはは目を疑ったが、すぐさま思考を切り替えてダンテを助け、更に攻撃へと導くために、レイジングハートを全力で大地へと叩き付けた。 「Crystal!!」 「ナイスだ!」 「当然っ!」 ダンテが真っ二つになる寸前、なのはの生み出したクリスタルが地中を突き破ってダンテの足場となる。 本来なら真上にいるものを易々と貫く鋭い攻撃なのだが、ちょっと操作してやれば、先がある程度の広さを持った氷柱を生み出すことなどなのはにとっては容易いことだ。 ムンドゥスの刃が氷柱を破壊するが、それより早くダンテは更に前に飛び跳ねて、渾身の力でリベリオンを振るう。 「イィィィヤァァァア!!」 一番近い部分、左手の肘付近に振り下ろされた一撃は、食い込んだ後ムンドゥスの左手をバッサリと切断した。 「ハッハァ!」 「小癪な!」 それでも、切られた左腕を気にすることすらなく、着地の瞬間を狙った右拳がダンテに迫る。 「捻り潰してくれるわ!」 「させない! ディバインバスター!!」 それを阻止せんと、なのはの魔法が突き進む。ダンテに直撃する寸前、その右腕を貫通し、吹き飛ばす。両手を失ったムンドゥス、ダンテはその隙を逃すまいと更に魔剣を駆る速度を上げる。 「小賢しいわ!」 だが、ダンテの一撃を咆哮による衝撃波だけで弾き返したムンドゥスは、失った両手をすぐさま復活させると、マグマに拳を叩きつけて二人の足元から火柱を発生させる。 「アイス・エイジ!」 ファントムに似た攻撃ゆえ、大地が赤く染まった瞬間次の展開を見越したなのはがディバインバスターの詠唱を中断し、周囲に極寒のバリアを生み出した。ダンテとなのはを包み込むように生じた氷の加護が間一髪で火柱を無効化する。 「助かった」 「どういたしまして」 連鎖的に吹き上がる溶岩がおさまるまではこの中から出るに出れない。だが、ムンドゥスもまた火柱を発生させているために他の攻撃ができない。 ダンテとなのはは好機とばかりに作戦を練る。両者とも受けたダメージは比較的浅く、その目は未だ戦意でギラついている。 「どうします?」 「小技でチマチマいくか、大技でぶっ飛ばすか。どっちがいい」 「……大技はまだ取っておきたいですね。あるにはありますけど、使ったらもう何も出来なくなりますから」 「わかった。なら、今まで通りだ。気をつけろよ」 「ダンテさんこそ」 灼熱の溶岩がおさまり、ムンドゥスが周囲に深遠の闇の如き黒い球を生み出す。ダンテはその瞬間駆け出しており、黒球を生み出した隙を逃さない。 なのはもまたアイス・エイジを解除し、ムンドゥスにダメージを与えるというよりはダンテの援護を主体に魔法を組み上げていく。 「なのは! あれを破壊しろ!」 「Alright!!」 ダンテが攻撃を緩めぬままなのはに指示を飛ばす。ムンドゥスの周囲に浮かぶ黒球、これを吸収されるとやっかいだというのは以前の戦いでイヤというほど思い知らされていた。 それでも、そちらに気を取られるとムンドゥスからの攻撃を食らう可能性が出てくる、その状況に随分苦しめられたが、今はなのはという頼りになるガンナーがいる。自分は攻撃に専念すればいい。 「Rock it!!」 放たれる光弾が、ムンドゥスの生み出した黒球を貫き爆砕する。ディバインバスターの効き方から鑑みて、ディバインシューターではムンドゥス本体には殆どダメージは与えられないだろう。 それでも、使い道はいくらでもあると言わんばかりに、持てる技全てを使って立ち向かう。 「おおおおっ!!」 ダンテもまた、周囲を飛び交う光弾のダンスには目もくれずにムンドゥスへ狂ったように剣を繰り出す。一撃一撃が小さくても、積み重ねれば必ず届くと確信して。 「チョロチョロと鬱陶しいわ!」 「ぐああっ!」 「きゃああっ!」 だが、どんなに攻撃を積み重ねたところで、水滴が石を穿つにはかなりの時間がかかる。石のように無抵抗ならいざ知らず、相手もまたこちらを殺そうとあらゆる手を駆使してくるのだ。 我慢比べでは、体力的になのはは相手にすらならず、ダンテもまた激戦の連続で磨り減った精神ではいつまで持つか分かったものではない。今もまた、背中から噴出した超広範囲にわたるレーザーの爆撃をかわしきれず、ダメージを負ったところだった。 「大丈夫か?」 「余裕」 「いい返事だ」 ダンテが再び駆け出す。迫り来るレーザーを弾き、衝撃波を避け、溶岩の上に突き出した足場を文字通り飛ぶように移動していく。 「ヌアアッ!」 「オラァッ!」 そして繰り返される闘い。ダンテの剣は悉くがムンドゥスの巨体に直撃している。そのくせ傍から見ていれば全く効いてるように見えないのだが、そんなことはなのはには関係ない。 「ディバインバスター!!」 そしてまた、聖なる一撃がムンドゥスの目を貫通する。人間ならば確実に急所であろう箇所を貫かれても、仰け反りすらせずにダンテと攻防を繰り広げている。 「セカンドッ(第二射)!!」 それでも、相手の体力は無限ではないのだろう。今は、そう信じて力の限り魔法を撃ち続けるしかない。寸暇を置かず放たれた二発目が今度はダンテを打ち抜こうとしたムンドゥスの右手を爆砕する。 「サードッッ(第三射)!!!」 今まさにダンテを叩き潰そうと迫っていた右手が爆砕され、それでも叫び声一つ上げないムンドゥスに更にもう一発叩き込まれる白き制裁。最後に狙うのは、ヒビが入っているくせに無防備に晒されているコアだ。 「いっけぇぇぇぇぇ!!」 「邪魔だぁ!!」 その一撃が直撃する寸前、コアを防御しようとする左腕をダンテが薙ぎ払う。なのはの操る魔法の威力は折り紙付きだ、たとえ倒せなくとも、コアに直撃すれば甚大なダメージを与えることができる。 「グガアアアッ!!」 ビシリ、とヒビは更に大きく広がる。それでも、ムンドゥスは倒れない。仕返しとばかりにはためく翼から、避けきれない量のレーザーが降り注ぐ。 ダンテは咄嗟に急所を庇いつつ後退、なのははギリギリ掠る程度でかわしつつ、ダンテの前に出てシールドを展開する。二人がムンドゥスの攻撃に耐える間に、コアを除いて与えた傷が全て修復されていく。 「クソッタレ、このままじゃ埒があかねーぞ」 腕を切っても、目を潰しても、すぐさま再生してしまう。もちろんダメージは蓄積しているのだろうが、無尽蔵に思える敵の体力や魔力はいささかの衰えも感じられない。このままでは、体より先に心が折れてしまう。 「ですね……でも」 それでも、特になのははこのままの戦法をもう少し続けるべきだと言う。 ダンテ自身も、なのはの最大魔法がなのはにどの程度の反動をもたらすか分からない以上、万が一失敗したときになのはを護りつつ戦わなければいけなくなってしまう、 そう考えると、やはり博打に出るには早いと判断せざるを得ない。 「さっきの力、使えないんですか?」 「ああ、打ち止めだ。それに、こんな不安定な場所であんな力使ったら足場が滅茶苦茶になる」 「そうですか。なら、しょうがないですね」 「何とかするさ」 「二人で、ね」 「ああ、勿論だ」 先ほど、ムンドゥスを撃墜した際、ダンテは伝説の魔剣士スパーダの力をほぼ完璧に再現していた。だが、今はスパーダから力の波動を感じない。 よって先ほどのようにスパーダの姿になることは不可能だった。それ故、剣としてのスパーダを使ったところでリベリオンと大差ないだろう、という結論がダンテの中で出ている。 「折れるなよ?」 「大丈夫、まだまだいけます」 「オーケイ。派手にいくぜ!」 ダンテが飛び出す。なのはの魔法が吹き荒れる。だが、そんな二人の決死の攻撃をまるで意に介さないムンドゥスが、戦いに幕を下ろすべく死の宣告を行った。 「虫けらが―――絶望の果てに死ねぃ!!」 ムンドゥスが両手をマグマに叩きつけ、上空に跳ね飛ばす。そこから放たれる死の流星群―――メテオスウォームが、ムンドゥスに楯突く全てのものを塵一つ残さず消滅せんと降り注ぐ。 こう狭い足場では、全方位に降り注ぐ流星を回避することは不可能、何とかして撃ち落すしかない。 「レイジングハート、ドッペルゲンガー!」 「Mode Doppel ganger ignition」 「アイス・エイジ・ダブル!!」 圧倒的な流星群を前に、二人のなのはが生み出す絶対零度の鎧が立ち向かう。ダンテとなのはを護るように吹き荒れる二重のバリアが、触れる流星群を灼熱の溶岩からただの石へと変えていく。 「おおおおおっ!!」 その中で、背中になのはを庇いながらダンテが神速でリベリオンを振り回す。剣の壁が氷の鎧を突き破る溶岩の成れの果て、岩石の弾丸を片っ端から弾き飛ばしていく。 「があっ!?」 だが、ダンテの神速の剣を以ってしても視界を埋め尽くす弾丸を全て叩き落すなど不可能だった。撃ち漏らした小さな礫がコートを突き抜けダンテの体を穿つ。 銃弾で打ち抜かれるのと大差ない痛みにダンテの剣は鈍り、一度でも鈍ってしまえば後はただの的になるだけだ。 「クソッ!」 それでもダンテはリベリオンを盾に、急所だけは護ると銃弾の嵐を耐える。今自分が倒れれば、後ろにいるなのはがあっという間に蜂の巣にされる、それだけは何としても阻止しなければならない。 「Shit!」 「やば……!」 そんな二人に襲い掛かる更なる絶望。二人を押し潰して余りある巨大な隕石が凄まじい勢いで迫る。アイス・エイジで防げるのは炎だけ、あの質量そのものを止めることは出来ない。 残る隕石がその一つだけならば、今すぐにアイス・エイジを解除してディバインバスターで撃ち抜くことも出来よう。 だが、今もまだ雨霰と降り注ぐ小さなメテオとそのために灼熱地獄になった周囲の超高温がそれを許さない。 ダンテもまた、自身を削る隕石を無視して叩き割ろうと防御を解こうものなら、すぐさま蜂の巣になることを理解しているがゆえに、巨大なメテオに対して取れる手段がない。 「諦めない……絶対に!!」 「あったりめーだ!」 されど、絶体絶命の状況において二人の目はまだ輝きを失ってはいない。なのはは自身が操るアイス・エイジを解除、周囲の業炎と降り注ぐ隕石へのバリアをドッペルゲンガーに任せる。 解いた瞬間凄まじい高熱がアイス・エイジのバリアを突き破って二人を襲う。服が燃え出しそうな温度の中、なのはは今まさに二人を押し潰さんとする巨大な一発に向けて砲撃を放つ。 「ディバインバスター・ケルベロス!!」 放たれた凶暴な閃光が隕石に直撃、宿る溶岩を消し飛ばし、破壊する。 「イィィィィヤァァァァァアア!!!」 その中、轟音に負けないダンテの咆哮が響き渡り、盾にしていたリベリオンを先ほどを上回る、最早視認すら出来ない速度で駆る。縦横無尽に駆け抜ける剣閃が降り注ぐ砕かれた隕石の欠片を叩き割り、粉塵へと変えていく。 「はぁっ……はぁっ……」 「ゼェ……ゼェ……」 ドッペルゲンガーが消え、アイス・エイジが霧散する。その跡に残ったのは、無茶な魔法行使の反動に膝をつくなのはと、全身に岩石の弾丸を食らって血塗れのダンテ。 ムンドゥス最強の攻撃は辛くも耐え凌いだが、その代償にあまりに力を使いすぎた。 「塵一つ残さぬ!!」 そんな二人に、次いで放たれた極大のレーザーをどうにかすることなど出来るわけがなかった。 「ぐわああああっ!!」 まず、なのはを護るように立っていたダンテの全身がぶち抜かれ、吹き飛ばされる。凄まじい勢いで吹き飛んだダンテが大地をその体で砕くのを見る暇もなく、次弾がなのはに直撃する。 「きゃああああっ!!」 「Reacter purge」 バリアジャケットが爆発を起こして消し飛ぶ。 グリフォンの時と同様、ハジケ飛ぶジャケットがダメージを相殺したおかげでギリギリ致命傷を免れ、それでも止まらないレーザーに全身を切り裂かれながら、なのははダンテ同様吹き飛ばされる。 「フフフ……ハハハハハハ!! これで我が障害は全て消えた!!」 大地に横たわるなのはと岩石に埋め込まれたダンテはピクリとも動かない。 流れ出る血が大地を赤く染め、周囲の熱がそれを蒸発させていくなか、ムンドゥスは動かなくなった二人には目もくれず勝利の哄笑を上げていた。 「フハハハハハハハハハ!! ハーッハッハッハッハッハ!!!」 前へ 目次へ 次へ
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サースタッフォードノースコート(サー・スタッフォード・ノースコート) ヘインのノースコート準男爵の一。 6代準男爵。
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